Crysis 3

Crysis 3：進化と終焉の物語

2013年、Crytekが開発しエレクトロニック・アーツより発売されたファーストパーソン・シューティングゲーム『Crysis 3』。2011年の『Crysis 2』に続くシリーズ第三作にして、Crysis三部作の最終章を飾る作品である。前作で好評だったナノスーツの機能はさらに強化され、新機能「リップ＆スロー」や強力な新武器コンパウンドボウなどが追加された。また、敵の装備や防衛設備をハッキングできる機能も実装され、戦略性の幅を広げている。

ポスト・アポカリプスのニューヨーク

舞台となるのは、巨大なナノドームに覆われたポスト・アポカリプスのニューヨーク市。初代『Crysis』の森と『Crysis 2』の都市景観が融合した独特の世界観は、プレイヤーに強い印象を与えた。ドーム内には「七不思議」と呼ばれる7つの個性的なエリアが存在し、それぞれの場所で異なる戦術が求められる。前作で批判された直線的なゲームデザインは改善され、探索の自由度が大きく向上している。

ゲームプレイ：進化したナノスーツと戦術

プレイヤーはナノスーツを装着したプロフェットを操作し、セフと呼ばれるエイリアン種族と戦う。ナノスーツの能力を駆使し、状況に応じてステルス行動や正面からの戦闘など、様々なアプローチが可能だ。敵AIも進化しており、プレイヤーの行動に的確に反応する。クローク、アーマー、ナノビジョンといったナノスーツの機能は、エネルギー管理を意識しながら使用することが重要となる。コンパウンドボウはクローク状態でも使用できるなど、戦略的な戦闘をサポートする要素も充実している。

マルチプレイヤー：新たなモードと洗練されたシステム

マルチプレイヤーモードでは、シングルプレイとは異なるゲームバランスで、最大16人（PC版）での対戦が可能だ。チームデスマッチやデスマッチといった定番モードに加え、非対称型のハンターモードも用意され、多様なプレイスタイルを楽しむことができる。ハンターモードでは、ナノスーツを装備したハンターと、通常兵士のCELL兵が対戦する。洗練されたキルストリークシステムや、環境オブジェクトを戦術的に利用できる「リップ＆スロー」といった新要素も導入されている。

ストーリー：復讐と贖罪

物語は、『Crysis 2』から24年後、悪徳企業CELLによってナノドームに覆われたニューヨークを舞台に展開する。プロフェットは、セフのリーダーであるアルファセフへの復讐を誓い、レジスタンスと共にCELLに対抗する。ストーリーは、CELLの陰謀、セフの脅威、そしてプロフェット自身の葛藤など、複数の要素が絡み合い、シリーズを通して描かれたテーマを深く掘り下げている。前作とは異なり、プロフェットは感情表現豊かに物語を彩り、プレイヤーの感情的な関与を促す。

開発：技術と表現の追求

本作の開発には約100人のチームが23か月を費やした。CryEngine3による美麗なグラフィックは、高い評価を獲得した。しかし、その一方でPC版の高いシステム要件は、「PCを溶かす」と表現されるほどであった。前作の直線的なゲームデザインへの反省から、本作では探索の自由度を高めることに重点が置かれ、ステージデザインにも工夫が凝らされている。武器デザインも、単なる見た目の違いではなく、ゲームの物語やテーマと密接に関連付けられている。

発売と評価

『Crysis 3』は、2013年2月にWindows、PlayStation 3、Xbox 360向けに発売された。Wii U版は開発中止となった。発売当初は、グラフィックやゲームデザイン、マルチプレイヤーモードに高い評価が集まった。しかし、ストーリーやボリューム、一部のゲームメカニズムについては批判もあった。商業的な成功は収められなかったものの、批評家からは概ね肯定的な評価を受け、シリーズの進化を示す作品となった。その後、リマスター版『Crysis 3 Remastered』がリリースされ、新たな形でプレイヤーに届けられた。

商業的成功の失敗とリマスター版

6600万ドルという巨額な予算を投じられたにもかかわらず、発売月の売上はわずか20万5000本と、商業的には大きな失敗に終わった。これは、同時期に発売された他のEAタイトルも不振だったことにも関係している。しかし、その美麗なグラフィックや洗練されたゲーム性など、多くの要素において高く評価されており、シリーズにおける重要な1作として位置づけられている。後にリマスター版も発売され、現在でも多くのゲーマーにプレイされている。

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