D-10 100mm戦車砲

D-10 100mm戦車砲の概要

D-10 100mm戦車砲は、ソビエト連邦で生まれた後装式ライフル砲で、主に戦車や対戦車自走砲に搭載されて運用されました。この砲の開発は、戦車火力の強化を目的として1940年代初頭に始まり、複数のモデルが登場しました。

D-10S

1944年初頭、ソビエト連邦軍がF-34 76mm戦車砲の代替としてD-5T 85mm戦車砲を搭載した新型T-34-85中戦車の運用を開始し、火力が大幅に向上しましたが、同時に対戦車自走砲への火力強化のニーズも高まりました。これに応じてペトロフ技師の設計チームが手がけたのがD-10Sです。この砲は、海軍のB-34艦載砲を基にしており、長さが53.5口径の長砲身により895m/秒の高初速を実現しました。この結果、D-10SはドイツのV号戦車パンターやティーガーIの主要火力よりも高い威力を持ちましたが、ティーガーIIとは若干の性能差がありました。

D-10Tとその後の発展

1945年には、D-10Tという改良型がT-44中戦車に搭載されるための研究が始まりました。試作型T-44-100の開発が進められ、D-10Tはその性能が確認されつつありました。しかし、T-44車体では砲の反動を吸収することができず、最終的にはT-54という新しい戦車が開発されました。

1955年には、D-10TGという新モデルが登場し、これには砲安定装置が追加されました。この装置により、射撃精度が向上しましたが、設計においては問題も生じ、走行中のトラブルが報告されました。T-54戦車に搭載されたこの砲は、西側によってT-54Aと呼ばれました。

その他のモデル

1956年には、D-10T2Sが開発され、さらなる改良が加えられました。このモデルには2軸のツィクローン砲安定装置が取り入れられましたが、行進中にも射撃を行えるほどの性能は達成されませんでした。このD-10T2Sを搭載したT-54は、西側によってT-54Bとして認識されました。また、59式戦車として中国でライセンス生産され、D-10TGに近い性能を持っていました。

以下はD-10 100mm戦車砲の諸元情報です。

• - 種別: 後装式ライフル砲
• - 口径: 100mm
• - 砲身長: 53.5口径長
• - 初速: 標準的な榴弾で900m/s、徹甲弾で887m/s

D-10系統の開発には、戦争の激化による火力向上の要求が背景にあり、各モデルはその期待に応える形で生まれてきました。しかし、その中には設計上の課題も多く、新たな戦車の登場と共に改良が続けられました。D-10系は戦車技術の進展と共にさまざまな改良が加えられ、戦車砲の発展に重要な役割を果たしました。

もう一度検索