DCI-P3

DCI-P3とDisplay P3：デジタルシネマとデバイス表示のための色空間規格

DCI-P3は、Digital Cinema Initiatives (DCI) が2005年にデジタルシネマシステム向けに策定したRGB色空間規格です。映画制作における高精度な色再現を目指し、従来のsRGBやAdobe RGBよりも広い色域を特徴としています。

DCI-P3の開発と特徴

DCI-P3の開発は、デジタルシネマの普及に伴い、劇場上映環境で忠実な色再現を実現するために始まりました。初期のデジタルシネマプロジェクターは、キセノンアークランプを使用しており、DCI-P3の色空間は、この光源特性を考慮して設計されています。

DCI-P3の主要な特徴は、その広い色域です。CIE 1931色度図において、約53.6%の色域をカバーし、sRGBの約70%に比べて大幅に広い表現力を持っています。特に緑色の原色がsRGBやAdobe RGBと比べてスペクトル軌跡により近く、より自然な緑色の表現が可能です。

DCI-P3の白色点は、約6300Kと定義されており、キセノンアークランププロジェクターの最適な光出力特性に合わせた設定となっています。このため、一般的なD65 (約6500K) とはわずかに異なります。

DCI-P3は、SMPTE (Society of Motion Picture and Television Engineers) の規格にも反映されており、関連する技術標準が数多く発行されています。例えば、SMPTE EG 432-1はD65白色点を用いたバリアントを定義しており、様々な用途への対応を図っています。

Display P3：DCI-P3をベースにした一般デバイス向け規格

Appleが策定したDisplay P3は、DCI-P3をベースに、一般のコンピュータやモバイルデバイスでの表示に最適化された色空間です。DCI-P3と同様の広い色域を維持しながら、いくつかの違いがあります。

まず、白色点をD65に変更することで、sRGBやAdobe RGBと互換性を高め、既存のアプリケーションとの連携をスムーズにしています。また、ガンマ値を2.2に設定することで、一般的なディスプレイとより良好な表示を実現しています。

これらの変更により、Display P3は、DCI-P3が持つ高精度な色再現能力を維持しつつ、一般デバイスでの使いやすさを向上させています。iPhoneやiPad、MacなどのApple製品を中心に採用されており、より鮮やかな画像表示に貢献しています。

DCI-P3とDisplay P3の比較

ソフトウェアとハードウェアでの対応

DCI-P3およびDisplay P3は、macOSやiOSなどのオペレーティングシステム、ブラウザ、画像編集ソフトウェアなどでサポートされており、対応したディスプレイを使用することで、高精細な色再現が可能です。Apple製品では、iPhone 7以降の機種や特定のiPad、MacモデルなどでDisplay P3に対応しています。

まとめ

DCI-P3とDisplay P3は、デジタルシネマから一般デバイスまで、幅広い用途に対応する色空間規格です。それぞれ異なる特性を持っていますが、いずれも高精度な色再現を実現するための重要な技術として、今後も発展していくでしょう。

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