DF-4 (ミサイル)

DF-4 (東風-4) 中距離弾道ミサイル

DF-4は、中華人民共和国が開発した中距離弾道ミサイル（IRBM）であり、アメリカ国防総省の識別番号ではCSS-3として知られています。このミサイルは、中国の核戦略において重要な役割を果たしました。

開発経緯

1965年3月、中国の第七機械工業部第一研究院は、4種類の弾道ミサイルを8年以内に開発する「八年四弾」計画を提案しました。この計画の中で、DF-4は射程4,000km級のIRBMとして、DF-5は射程12,000km級のICBMとして位置づけられました。

DF-4は、アメリカ軍のB-52戦略爆撃機が利用するグアム島の航空基地を攻撃することを想定して開発されました。一方、DF-5は、中国北部からアメリカ本土を射程に収めることを目標としていました。DF-4の開発では、既存のDF-3ミサイルを1段目に使用し、2段目には改良型のエンジンを使用する設計が採用されました。また、メガトン級の核弾頭を搭載するため、2,200kgの運搬能力を持たせることが求められました。

DF-4の開発は1965年に開始されましたが、当初はDF-5の開発が優先されたため、進捗は緩やかでした。しかし、1969年の中ソ国境紛争の激化を受け、開発が加速されました。1970年1月30日には最初の発射試験が成功し、目標射程は4,500kmに延長されました。その後、更なる改良により最大射程は4,750kmに達しました。

技術的特徴

DF-4は全長28.05m、直径2.25mの2段式ミサイルで、弾頭分離式を採用しています。ミサイルの下部には、4枚の安定板が取り付けられています。発射時の重量は82,000kgです。

推進剤には、1段目と2段目ともにDF-3と同様に非対称ジメチルヒドラジンを燃料とし、AK-27赤煙硝酸を酸化剤として使用しています。1段目にはDF-3で使用されたYF-2エンジンを改良したYF-2Aエンジンを4基クラスター化して搭載しています。2段目には、真空環境での性能を最適化したYF-3エンジンが1基搭載されています。

DF-4は、1～3MT級の核弾頭を2,200kg搭載する能力を持ち、誘導方式にはストラップダウン式の慣性航法装置を採用しています。操舵には、噴射ノズル直後に設置されたグラファイト製のジェットベーンが用いられています。

発射作業

DF-4は全長が長いため、道路輸送時には1段目と2段目を分離して運搬する必要があります。そのため、移動式発射台の採用は難しく、初期には固定サイロ方式が検討されましたが、当時の中国の技術や費用面から実効性に乏しいため断念されました。

最終的に、山中に横穴を掘って格納庫を設ける横穴格納近接発射方式が採用されました。発射時には、格納庫内で組み立てられたミサイルが軌条台に載せられ、横穴から曳き出されます。そして、発射台で垂直に起立させた後、アラインメントや搭載装置の点検、推進剤の注入など、DF-3と同様の手順で発射準備が行われます。

性能

DF-4の最大射程は、2,200kgの核弾頭を搭載した場合、5,400kmとされています。この射程は、ロシア全域、グアム島、アラスカ州をカバーします。命中精度は、5,400kmの距離でCEP（半数必中界）が1,500mとされています。

配備

DF-4は1980年に第二砲兵部隊に配備され、1985年以降は最大で10～25発が作戦任務に就いていたとされています。アメリカ国防総省の報告書によると、2010年には15～20発のミサイルと10～15基の発射台が確認されています。また、ミリタリーバランス2016年版では、実戦運用されている発射台の数は10基と推定されています。

当初、DF-4は中国西部に集中配備されていましたが、後にDF-31などへの更新が進み、配備先は湖南省の2か所に減少したとされています。その後、第805ミサイル旅団はDF-31Aに機種変更されました。2015年末時点では、1個ミサイル旅団に配備されていることが確認されています。

民間型

DF-4の派生型として、中国初の人工衛星打ち上げロケットであるCZ-1（長征1号）が開発されました。CZ-1は、DF-4の2段式構造に3段目の固体ロケットモーターを追加したものです。1970年4月24日には、中国初の人工衛星である東方紅1号の打ち上げに成功しました。

まとめ

DF-4は、中国の核戦力において重要な役割を果たした中距離弾道ミサイルです。その開発は、中国のミサイル技術の発展に大きく貢献し、その派生型であるCZ-1は、中国の宇宙開発の第一歩を飾りました。DF-4は、初期の中国核戦略を支えた重要なミサイルであると言えるでしょう。

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