DIPS (野球)

DIPS（Defense Independent Pitching Statistics）

DIPSとは、投手の成績を守備の影響から独立して評価するための指標で、アメリカのボロス・マクラッケンによって提唱されました。この考え方は、投手が自身でコントロールできる要素とそうでない要素を区別し、主に投手自身が影響を及ぼす項目に基づいて評価を行うものです。

DIPSの基本理念

DIPSが定義する「投手が自身でコントロールできない要素」とは、勝利や敗戦、勝率など、味方の打線やリリーフ投手の影響を受ける項目です。また、被安打や自責点、防御率なども、守っている野手の影響が大きくなってしまいます。これらの影響が数値化しにくいため、DIPSではこれらを無視し、投手自身の成績を適切に評価することを目指しています。

一方で、「投手が自身でコントロールできる要素」は、奪三振、与四球、被本塁打という3つのカテゴリーに集約されます。この3部門のみで投手の成績を評価することにより、より正確に投手のパフォーマンスを測定することが可能です。最近では、ゴロやフライの割合も投手がある程度コントロールできることが明らかになり、これも評価に盛り込まれるようになっています。

DIPSが引き起こした議論

DIPSの提唱以来、その考え方はセイバーメトリクスの分野で大きな議論を呼び起こしました。当初はマクラッケンに対する批判が多く、一部の専門家からは「バカげている」との意見が寄せられました。ビリー・ビーンを含む一部の支持者もこの概念を理解するのに苦労しましたが、彼は後にマクラッケンの理論が正しいと認めました。

DIPSに基づく指標

DIPSから派生した指標のひとつにFIP（Fielding Independent Pitching）があります。FIPは、投手の主観的な成績を特定の公式によって算出するもので、得点を基にした補正を行います。FIPの式は次のようになります：

```
FIP = {13 × HR + 3 × (uBB + HBP) - 2 × SO} ÷ IP + Constant
```

ここで、HRは被本塁打、uBBは故意でない四球、HBPは死球、SOは奪三振、IPは投球回を指します。また、Constantはリーグ全体の補正値となっています。

他にも、xFIP（Expected Fielding Independent Pitching）という指標も存在します。これは、実際に打たれたフライボールに基づいて、本塁打の期待を計算するものです。

DIPS2.0と新たなモデル

マクラッケンはその後の研究でDIPS2.0を提案し、ここでは特に変化球投手の評価を改善し、BABIPとの関係を深く研究しています。ただし、新たな指標が公式に計算されていなかったり、多くの係数を含むため、計算は非常に複雑です。さらに、グラハム・マカリーによるtRA（True Runs Allowed）やSIERA（Skill-Interactive Earned Run Average）なども現れ、より詳細な投手の成績評価が可能になっています。

まとめ

DIPSの理念は、投手の実力を正確に評価しようとするもので、その後の指標開発に大きな影響を与えてきました。特に、従来の統計では捉え切れない投手の真のパフォーマンスを浮き彫りにするための重要な手法として、今もなお広く活用されています。野球の分析においてDIPSは欠かせない指標となっており、分析者はFIPやxFIPといった新たな指標を駆使し、選手の価値を測るための重要な手段となっています。

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