DMC・デロリアン

デロリアン：夢と狂気が駆け抜けた、唯一無二のタイムマシン

デロリアン（DeLorean）は、アメリカのデロリアン・モーター・カンパニー（DMC）が1981年から1982年にかけて製造・販売したスポーツカーです。その斬新なデザインと、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズに登場するタイムマシンのベース車となったことで、世界的に有名な車となりました。

誕生の背景

DMCは、GMの役員を辞任したジョン・デロリアンが、「商業道徳に適った車」を作るという理想を掲げて設立した会社です。1976年、チーフエンジニアのウィリアムT.コリンズが最初のプロトタイプ「DSV-1」を完成させました。当初はシトロエン・CXの直列4気筒エンジンを搭載していましたが、パワー不足のためV型6気筒PRVエンジンに変更されました。

ボディデザインは、イタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロが担当。ロータス・カーズが機構面を請け負うなど、各国の技術が集結して開発が進められました。

デザインと特徴

デロリアンの最大の特徴は、以下の点が挙げられます。

ステンレスボディ: つや消しのSS304ステンレス鋼パネルが使用され、メンテナンスフリーを意識した設計となっています。
ガルウィングドア: 航空機メーカーのグラマンが開発したトーションバーと窒素ガス封入ストラットで支えられたガルウィングドアは、そのユニークな外観を際立たせています。
* RRレイアウト: エンジンを後部に搭載するリアエンジン・リアドライブ（RR）レイアウトを採用しています。

これらの特徴的なデザインは、デロリアンを他のスポーツカーとは一線を画す存在にしています。

製造と販売

製造は、イギリス・北アイルランドのベルファスト郊外にある工場で行われました。しかし、製造スタッフの経験不足から、初期の品質問題が多発。エンジントラブルなどが頻発し、多くの苦情が寄せられました。

発売当初は、斬新なデザインと前評判から多くのバックオーダーを抱え、好調な売れ行きを見せました。しかし、2万5,000ドルという高価格や、品質問題、受注キャンセルなどから、販売はすぐに低迷。さらに、イギリス政府からの補助金停止や、ジョン・デロリアン自身の逮捕なども重なり、1982年にDMCは倒産しました。

1981年1月21日から1982年12月24日までの間に、推定8,975台が製造され、そのうち約6,500台が現存すると考えられています。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』での起用

デロリアンが世界的に有名になったきっかけは、1985年公開の映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にタイムマシンとして登場したことです。

監督はガルウィングドアを装備していたことがタイムマシンのベースに採用された理由の一つだと語っています。映画は大ヒットし、デロリアンは世界中の人々に知られることとなりました。

その後

1995年、DMCの商標を引き継いだテキサス州の「デロリアン・モーター・カンパニー」（新DMC）が、残存するデロリアンの部品供給やレストア事業を行っています。新DMCは、デロリアンの再生産も計画していますが、安全基準や排出ガス規制の問題から、実現は困難な状況です。

近年では、電気自動車（EV）としてデロリアンを復活させる計画も発表されています。

まとめ

デロリアンは、短い製造期間の中で様々な問題を抱えながらも、その独特なデザインと映画での活躍によって、人々の記憶に残る車となりました。夢と狂気が入り混じったその歴史は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

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