シトロエン・CX

シトロエンCX：フランスが生んだ孤高のフラッグシップ

シトロエンCXは、フランスの自動車メーカー、シトロエンが1974年から1989年にかけて製造したアッパーミドルクラスの乗用車です。同社のフラッグシップモデルとして、DSの後継車という重要な役割を担いました。流麗なボディラインと革新的な技術、そして独特の個性で、多くの自動車愛好家を魅了しました。

1970年代の革命児：DSからの進化

CXの開発背景には、長年愛されてきたDSの後継モデルというプレッシャーがありました。DSは当時としては革新的なハイドロニューマチックサスペンションを採用していましたが、開発から20年近くが経過し、旧態化しつつありました。そこでシトロエンは、小型モデルGSの技術をベースに、よりモダンで空力性能に優れたボディを持つCXを開発しました。

CXの最大の特徴は、その流線型のボディデザインです。ルーフが後端まで滑らかにつながる、一見ハッチバックのようなシルエットは、当時としては非常に斬新でした。リアウインドウの独特の凹面形状も、空気抵抗を低減するための工夫であり、空気抵抗係数を示す「Cx」から車名が付けられたのも納得です。

さらにCXは、シトロエン車として初めて横置きエンジン方式を採用しました。これにより、DSで問題となっていた前席足下へのバルクヘッドの張り出しが解消され、室内空間の広さが向上しました。また、ロードノイズ低減のため、時代を先取りしたペリメーターフレーム構造も採用しています。

洗練された内装と先進の技術

CXの内装は、DSやGSの流れを汲む機能主義的なデザインが特徴です。広々とした室内空間は、乗員に快適な移動空間を提供しました。一方、操作系は独特で、ウインカーやライトなどのスイッチ類をメータークラスターに集中配置したクラスタースイッチや、ボビン式メーターなど、個性的な装備が採用されています。

サスペンションは、DSと同様にハイドロニューマチック式を採用。快適な乗り心地と優れた操縦性を両立しました。4輪ディスクブレーキも、高速走行時の安全性を確保する重要な装備でした。パワーステアリングも標準装備され、運転の負担を軽減していました。

エンジンバリエーションとボディタイプ

エンジンは、2.0L、2.2L、2.4Lの直列4気筒OHV、2.0L、2.5Lの直列4気筒SOHCガソリンエンジン、そして2.2L、2.5Lの直列4気筒OHVディーゼルエンジンが用意されました。2.5Lのガソリンとディーゼルエンジンには、ターボ仕様も存在しました。

ボディバリエーションは豊富で、セダンの他に、ホイールベースを延長したステーションワゴンタイプのブレーク、7人乗りのファミリアール、高級仕様のプレステージュ、そしてリムジンが設定されました。

日本におけるCX

日本では西武自動車販売がCXを輸入販売しました。BMW 5シリーズと同等の価格設定で、アウディよりも高価だったことから、シトロエン＝高級車というイメージが定着しました。しかし、ブレークの輸入は、日本の1ナンバー登録の規定により断念されたという逸話も残っています。また、ターボモデルの輸入も検討されましたが、MTのみの設定だったため見送られました。

シトロエンCXの遺産

1989年に生産終了したCXですが、その独特のデザインと革新的な技術は、後のシトロエン車にも大きな影響を与えました。特に、流線型のボディデザインやハイドロニューマチックサスペンションは、シトロエンのアイデンティティを象徴するものとなりました。CXは、単なる自動車という枠を超え、フランス自動車史に燦然と輝く1台と言えるでしょう。

ロードランナー：CXの変形

新聞・雑誌などの長距離輸送用に、CXファミリアールをベースに改造された6輪仕様の車両が「ロードランナー」と呼ばれています。後部荷室の拡大を目的として車体を延長し、それを支えるため後輪が4輪となっています。これは、シトロエン自身による改造ではなく、ユーザーによる改造です。救急車やキャンピングカーなど、様々な用途に改造されたCXが存在しています。

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