DRESS (TM NETWORKのアルバム)

TM NETWORK|TM_NETWORKのリプロダクションアルバム『DRESS』

『DRESS』（ドレス）は、日本の音楽グループTM NETWORK|TM_NETWORKによる初のリプロダクションアルバムで、1989年5月12日にEPIC/SONY RECORDSから発売されました。アルバムは、以前の作品を誕生させた「FANKS」というテーマの延長線上にあり、再びその気概を受け継ぐ形で企画されました。

背景とリリースの意義

このアルバムのプロモーションには「Re-Production それは素敵なマジックです」というキャッチコピーが使われ、全曲に解説が添えられている点が特徴的です。また、『GORILLA』（1986年）で示された「FANKS」の考え方を再構築する過程で、小室哲哉が「FANKS!!'89」のコンセプトに基づき、このリプロダクションアルバムを発表することとなりました。もともとのタイトル案は『ブーム・ボルケーノ』でしたが、最終的に『DRESS』としてリリースされました。

制作プロセス

通常、リミックスアルバムはオリジナルの音源を調整する形が多いのですが、『DRESS』ではボーカルトラック以外のすべてを再録音し、世界のプロデューサーによる新たなアレンジを加えるという新しい試みが行われました。このようにオリジナルの楽曲をもとに、海外のクリエイターに自由にアプローチさせるスタイルは、当時の日本の音楽シーンでは斬新でした。「リプロダクション」という名称の元に、ボーカルとメロディ、歌詞だけが残され、その他はまったく新たに制作されるという手法が取られました。

制作には通常のリミックスに比べてかなりの時間がかかり、全15トラックあるこのアルバムは、完成までに1週間を要したとされています。

音楽性と収録曲

『DRESS』には、ヒットシングルも多数収録されています。「COME ON EVERYBODY (with Nile Rodgers)」、「KISS YOU (KISS JAPAN)」、「GET WILD '89」はその中でも特に注目され、いずれも同時にチャートインするという快挙を成し遂げました。この成績は、日本の音楽史においても独自の記録です。また、いくつかの曲がアルバムに収録されなかったため、後の再発盤にボーナストラックとして追加されました。

上記の楽曲は、それぞれ異なるアルバムに由来し、アレンジを加えられた経緯があります。特に「GET WILD '89」に関しては、リプロダクションバージョンがライブで披露される機会が多くありましたが、以降の演奏では原曲が演奏されることが一般的となりました。

反響と批評

音楽評論家の平山雄一はこの試みを「博打」と捉え、TM NETWORK|TM_NETWORKの作品を海外のプロデューサーに委ねる挑戦的な姿勢が功を奏したと評価します。また、デュラン・デュランの楽曲を手掛けたナイル・ロジャースや、ユーロビートの先駆者ピート・ハモンドの参加によって、アルバム全体に国際的な説得力が生まれました。このような大胆なアプローチは、TM NETWORK|TM_NETWORKの音楽的なスケールを拡張させる重要なステップと位置付けられています。

リリースと影響

『DRESS』は、LP、CT、CDの三形態で発表され、LPはこのアルバムが最後のリリースとなりました。高い評価を受け、後にデジタルリマスタリングされた盤も発売され、改めてその価値が見直されています。このアルバムはTM NETWORK|TM_NETWORKの音楽の新たな地平を切り開く一作としての重要性を持つ作品となっています。

もう一度検索