DSM (企業)

DSM：炭鉱からグローバル化学企業へ

DSM（Koninklijke DSM N.V.）は、オランダに本社を置く世界的化学企業です。その歴史は、1902年にオランダ政府が設立した国営炭鉱会社にまで遡ります。当初は石炭採掘が中心でしたが、1919年からコークス炉ガスを利用した化学肥料の製造に着手、これが化学事業への転換の始まりでした。

その後、DSMは積極的な事業展開を続けました。1950年代にはカプロラクタムやポリエチレンの製造を開始し、バルクケミカル分野への進出を強化。1973年には炭鉱事業から完全撤退し、化学企業として本格的な発展を遂げます。日本の宇部興産と似たような転換を遂げたと言えるでしょう。

1980年代後半から1990年代にかけては、オランダ政府による株式の段階的放出を経て、1996年には完全民営化を達成。この間も、Stanyl（ポリアミド46）などの新素材の開発・生産など、技術革新にも積極的に取り組んできました。

2000年代に入ると、DSMはM&A戦略を積極的に展開します。Gist-BrocadesやCatalytica Pharmaceuticalsといった企業を買収することで、ライフサイエンス分野、特にビタミンやカロテノイド事業を強化しました。一方で、石油化学事業は売却し、事業ポートフォリオの最適化を進めました。

近年は、先端技術を持つベンチャー企業への投資も積極的に行っており、持続的な成長を目指しています。最高経営責任者(CEO)であるFeike Sijbesma氏は、買収企業であるGist-Brocades出身の経歴を持ち、オランダ銀行監査役や欧州化学工業連盟（CEFIC）ボードメンバーも務めるなど、業界における高い地位と影響力を持っています。

日本におけるDSM

日本においてもDSMは事業を展開しており、東京にオフィスを構えるDSM株式会社が、健康・機能性食品・飲料、動物飼料向けのビタミンやカロテノイド、化粧品原料などの販売を行っています。エンジニアリングプラスチックス分野については、ディーエスエムジャパンエンジニアリングプラスチックス株式会社が、自動車や電気電子用途向けの高機能樹脂の開発、生産、販売を担っています。

主な製品

DSMは幅広い製品を提供しており、その中には以下のものがあります。

カプロラクタム
硫酸アンモニウム
ポリアミド
アクリロニトリル
ポリエチレン
ポリエステル
バイオエタノール
ビタミン
カロテノイド
Fruitflow（健康食品素材）

スポーツへの関与

DSMは、サイクルロードレースチーム「チームDSM」のメインスポンサーを務めており、スポーツ分野への貢献も行っています。

まとめ

DSMは、国営炭鉱会社からスタートした歴史を持つ、世界的に活躍する総合化学メーカーです。積極的な事業転換、技術革新、M&A戦略によって成長を続け、現在はライフサイエンス分野を含む幅広い事業を展開しています。今後も、持続可能な社会への貢献を目指しながら、革新的な技術開発と事業展開を続けていくことが期待されます。

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