『Dancin' M』 - 麻倉未稀
1984年5月21日、CRYSTAL BIRD/
キングレコードよりリリースされた
麻倉未稀の通算5作目にあたるオリジナル
アルバムが『Dancin' M』です。
アルバムタイトルが示すように、本作はグルーヴ感あふれるダンサブルな楽曲を中心に構成されており、聴く者の身体を自然と揺らすようなエネルギーに満ちています。
リリース当時の帯には、「「黄昏ダンシング」「ホワット・ア・フィーリング」の2大ヒット曲を中心にダンサブルなナンバーを収録した
麻倉未稀のニュー・
アルバム!!」というコピーが踊り、本作のコンセプトを明確に打ち出していました。実際に、当時の
麻倉未稀の代表曲であり、大ヒットを記録した6枚目の
シングル「What a feeling 〜フラッシュダンス」や8枚目の
シングル「黄昏ダンシング」といった楽曲が、この
アルバムの核となっています。これらのヒット曲に加え、アップテンポなオリジナル曲や話題の洋楽カバー曲が収録されることで、一貫したダンサブルな世界観が作り上げられています。
この
アルバムは、当時主流であったLP
レコードやカセットテープ版と、普及が進み始めていたCD版とで収録曲が異なっていました。LP・CT版は全10曲構成でしたが、CD版ではさらに2曲が追加され、合計12曲が収録されました。CD版に追加されたのは、9枚目の
シングル曲「ロマンスは熱いうちに -The City of Romance-」と、過去にリリースした洋画主題歌のカバー
アルバム『SCREEN』に収められていた「XANADU」(ザナドゥー)です。なお、7枚目の
シングル「それだけの旅」自体は収録されていませんが、そのB面曲「メモリーズ・オブ・ユー」はLP・CT版、CD版ともに収録されています。
アルバムには、
麻倉未稀自身が作詞を手がけた楽曲や、著名な日本人作家陣によるオリジナル曲に加え、当時の世界的なヒット曲を日本語でカバーした楽曲が複数収録されています。特に注目すべきカバー曲をいくつかご紹介しましょう。
LP・CT版のSide Aの3曲目に収録された「
ビリー・ジーン」は、マイケル・ジャクソンが1982年の歴史的
アルバム『スリラー』に収め、その後の
シングルカットで世界的な社会現象を巻き起こした「Billie Jean」の日本語カバーバージョンです。日本語訳詞は
田口俊が担当しています。
同じくSide Aの5曲目「テル・ハー・ノー」は、1960年代に活躍した
イギリスのロックバンド、
ゾンビーズが
1965年に
シングルヒットさせた「Tell Her No」を日本語でカバーしています。こちらは
竜真知子が訳詞を手がけました。
LP・CT版のSide Bの4曲目に収録された「ファー・フロム・オーヴァー」は、俳優
シルヴェスター・スタローンの弟である
フランク・スタローンが
1983年に発表した楽曲のカバーです。この曲は、
シルヴェスター・スタローン主演の映画『
ステイン・アライブ』(
1983年)の
サウンドトラックに収録され、映画とともに注目されました。
麻倉未稀自身が訳詞を手がけています。この曲は、8th
シングル「黄昏ダンシング」のB面曲としても収録されていました。
さらに、CD版に追加収録された「ザナドゥー」は、1980年のミュージカル映画『ザナドゥ』の主題歌であり、エレクトリック・ライト・オーケストラ(ELO)とオリビア・ニュートン=ジョンの共演で大ヒットした楽曲のカバーです。
以下に、LP・CT版およびCD・
音楽配信版の全収録曲リストを記します。
LP・CT版 (全10曲)
Side A
1. さよならロンリー・ハート
2. 黄昏ダンシング (8th
シングルA面曲)
3.
ビリー・ジーン (マイケル・ジャクソン「Billie Jean」カバー)
4. ナイト・ゲーム・シティ
5. テル・ハー・ノー (
ゾンビーズ「Tell Her No」カバー)
Side B
1. ホワット・ア・フィーリング 〜フラッシュダンス (TV Version) (6th
シングルA面曲の
アルバム・バージョン)
2. ディスタンス
3. メモリーズ・オブ・ユー (7th
シングル「それだけの旅」B面曲)
4. ファー・フロム・オーヴァー (8th
シングル「黄昏ダンシング」B面曲、
フランク・スタローン「Far from Over」カバー)
5. ワイン・クーラーでもう一度 (9th
シングル「ロマンスは熱いうちに -The City of Romance-」B面曲)
CD・音楽配信版 (全12曲)
1. ロマンスは熱いうちに -The City of Romance- (9th
シングルA面曲) - CD・配信に追加
2. さよならロンリー・ハート
3. 黄昏ダンシング
4.
ビリー・ジーン
5. ナイト・ゲーム・シティ
6. テル・ハー・ノー
7. ザナドゥー (カバー
アルバム『SCREEN』収録曲) - CD・配信に追加
8. ホワット・ア・フィーリング 〜フラッシュ・ダンス (TV Version)
9. ディスタンス
10. メモリーズ・オブ・ユー
11. ファー・フロム・オーヴァー
12. ワイン・クーラーでもう一度
『Dancin' M』は、当時の
麻倉未稀の活動における勢いを象徴する、まさに「踊れる」コンセプト
アルバムとして位置づけられます。自身の代表曲と、時代を彩る洋楽カバーを巧みに融合させた本作は、メディアによる収録曲の違いという点でも、当時の音楽ソフト市場の変遷を垣間見ることができる興味深い作品と言えるでしょう。