Digital storytelling

デジタル・ストーリーテリング（DST）とは

デジタル・ストーリーテリング（DST）は、1990年代初頭にアメリカ西海岸で生まれた表現活動です。デジタル画像やデジタル機器を用いた映像表現に関心を持つ人々によって発展し、文化、芸術、教育分野に広まりました。

概要

DSTは、ワークショップ形式の参加型活動として成長し、英語圏を中心に実践が広がりました。1998年に発足したThe Center for Digital Storytelling（CDS）が、DSTワークショップの推進役としてファシリテーターの派遣やプログラム開発を担っています。

種類

デジタル・ストーリーとは、「短い、一人称のビデオであり、録音した音声と静止画または動画、そして音楽やその他のサウンドを組み合わせて制作した物語」と定義されます。

デジタル・ストーリーテラーとは、「人生経験や考え、感情などを物語とデジタル・メディアを用いて残そうとする人」を指します。CDSでは、ビデオ制作の経験が少ない人でも、数日間のワークショップに参加することで、ファシリテーターの指導を受けながらデジタル・ストーリーを完成させることが可能であるとしています。

デジタル・ストーリーテリング・ワークショップは、デジタル・メディア・ツールを用いて、人々の暮らしの中の物語を映像化し、共有するものです。物語制作の過程で、教育効果、関係性の構築、公正さを引き出すなどの利点が生まれます。CDSは、このワークショップをfacilitative teaching methods（促進的教授法）と理論づけています。

ワークショップのプロセスは、以下の流れで行われます。

1. ストーリー・サークル：参加者同士で物語を共有し、アイデアを出し合います。
2. 物語の作成：個々の参加者が自身の物語を文章化します。
3. 物語（ナレーション）の録音：物語のナレーションを録音します。
4. 画像の選択：物語に合った画像や動画を選択します。
5. パソコンソフトを用いた映像編集：選択した素材を編集し、映像作品としてまとめます。
6. 完成作品上映会とシェアリング：完成した作品を上映し、参加者同士で共有します。

完成作品は、上映会やウェブ、DVD、ケーブルテレビなどを通じて公開されます。

The Center for Digital Storytelling（CDS）

CDSは、独自の“価値観と原理”を用いたワークショップを実施し、コミュニティや教育、企業との連携を通じて大規模なプログラムを開発しています。健康、福祉、教育、歴史と文化の保全、コミュニティ開発、人権、環境など、幅広い分野で活動しています。

CDSの価値観と原理は、以下の6項目に亘ります。

だれもが保有する強力な物語
傾聴
見聞による認識
人間本来の創造活動
想像性を発揮するための技術
物語の共有による変化

これらの基本原理に基づいたワークショップの事例は、ウェブで公開されています。

事例

CDSの関与による取り組みとして、イギリスのBBC･Capture Wales、オーストラリア政府が先住民への謝罪のために用いた事業、8000時間以上のアフリカ系アメリカ人の経験を記録したオーラル・ヒストリーサイトなどが挙げられます。

関連項目

映像
ストーリーテリング：ここでは、絵本や書籍の読み聞かせではなく、語り手が物語を咀嚼し、自身の言葉で語る手法を指します。素話とも呼ばれます。経済やプレゼンテーションで使用される同音異義語も存在します。

DSTは、デジタル技術を活用して、人々の個人的な物語を共有し、社会的な課題に取り組むための強力なツールとして、その重要性を増しています。

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