Dr.キリコ 白い死神

『Dr.キリコ 白い死神』

『Dr.キリコ 白い死神』は、手塚治虫が原作を手掛け、藤澤勇希が脚本、SANORINが作画を担当した日本の漫画で、2016年から2018年にかけて『別冊ヤングチャンピオン』で連載されていました。この作品は、手塚の名作『ブラック・ジャック』に登場する安楽死専門の医師であるドクター・キリコを中心に描かれています。

あらすじ

本作は、回復が見込めず苦痛に怯える患者に安楽死を施す“白い死神”ドクター・キリコの物語です。彼の施す安楽死を通じて、人間の欲望、愛憎、儚い願いや生きる喜びが織り交ぜられた深い人間模様が描かれていきます。キリコは摩天楼の一室や北欧の針葉樹の山小屋、アラブの戦乱の地、寒村の茅葺きの家など、さまざまな場所で苦しむ患者たちに寄り添い、安楽死を選ぶことの意味を問いかけています。

主な登場人物

ドクター・キリコ

• - 銀髪で痩せ型、隻眼という特異な外見を持つキリコは、500万円という高額な料金で安楽死を請け負う医師です。かつてはゲリラの軍医として重傷者に接しており、その経験から安楽死専門の医師としての道を歩むようになりました。彼が開発した「キリコ・オリジナル」と呼ばれる装置を用いて、患者に安楽死を施します。安楽死を行うためには、「回復の見込みがないこと」「生きていることが苦痛であること」「患者自身が死を望んでいること」という3つの条件を厳守します。

白河郁馬（しらかわ いくま）

郁馬は幼少期に母を失い、腎不全に苦しむ父のために家事を行いながら生活していました。彼はキリコにより救われるも、父は治療代のために無理を重ね、結局再起不能に。郁馬はその後、キリコのもとで生活を共にすることになります。

在尾美亜（ありお みあ）

美亜は「ゾンビ」と呼ばれ、仲間外れにされる少女です。医師を志すも母の死を受け入れられず、遺体と同居する日々を送りますが、キリコの助けで前を向くことができるようになります。

中央病院の院長

不明な名前を持つこの医師は、郁馬の父の手術を台無しにし、郁馬から3000万円で和解を迫られます。キリコとは昔からの知り合いで、彼の指示を受けることになります。

六道善優（りくどう ぜんゆう）

若手実業家である善優は、温和な表情を装っていますが、裏でキリコを利用して自らのビジネスを進めようとしています。

ユリ

原作『ブラック・ジャック』に登場したキリコの妹で、安楽死の危険を止めたいと考え、医師の道を進みます。彼女もまた、患者の苦痛を和らげるため、時には日本の基準を超える治療を行います。

『ブラック・ジャック』との関連

本作ではキリコの他、妹のユリが重要なキャラクターとして登場しますが、原作の主要キャラクターは出てきません。しかし、原作に基づいた設定やテーマがいくつも見受けられるため、共通の世界観を持っていることが感じられます。

書誌情報

『Dr.キリコ 白い死神』は全5巻で、手塚治虫（原作）、藤澤勇希（脚本）、SANORIN（作画）、手塚プロダクション（協力）による作品で、秋田書店から刊行されています。各巻は2016年から2019年にかけて発行されました。

この作品は、ただのエンターテインメントに留まらず、安楽死というテーマを掘り下げ、人間の命とその価値について問いかける深い物語となっています。

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