E・L・カニグズバーグ

エレイン・ローブル・カニグズバーグ（Elaine Lobl Konigsburg, 1930年2月10日 - 2013年4月19日）は、アメリカ合衆国を代表する児童文学作家の一人です。1967年のデビュー以降、半世紀近くにわたり、その独特のユーモアと鋭い人間観察眼をもって、数々の優れた作品を生み出しました。特に、『クローディアの秘密』(1967年発表)と『ティーパーティーの謎』(1996年発表)で、児童文学における最も権威ある賞の一つであるニューベリー賞を二度受賞したことは、彼女の功績を示す特筆すべき点です。また、デビュー作と同じ年に発表された『魔女ジェニファとわたし』はニューベリー賞次点に選ばれており、初期からその才能が高く評価されていました。

ニューヨークのブロンクスに生まれたカニグズバーグは、共働き家庭の三姉妹の次女として育ちました。幼少期にペンシルベニア州へ移り、フェニックスビルやファレルで青春時代を過ごします。高校では優秀な成績を収めましたが、大学進学の費用を捻出するため、一時的に生肉工場で経理業務に就きました。この工場勤務中に、後の夫となるデビッド・カニグズバーグと出会っています。

彼女は一家で初めて大学に進学し、カーネギーメロン大学で化学を専攻しました。優等で卒業後、夫と結婚し、ピッツバーグ大学で修士号取得を目指していましたが、研究中の爆発事故を経験し、化学分野での道を断念します。夫のデビッドが心理学の博士号を取得した後、一家はフロリダ州ジャクソンビルへ転居。ここでカニグズバーグは私立女子校の科学教師となりますが、実験室の中身よりも、生徒たちの思考や内面に強い関心を抱くようになり、教職を辞しました。

その後、長男、そして二人の娘に恵まれ、ニューヨーク郊外に移住。末の娘が幼稚園に入園したのを機に、本格的に創作活動を開始します。この頃から絵画も学び始め、自身の作品の多くで、装丁や挿絵を自ら手掛けるようになりました。絵本も数冊出版しており、言葉と絵の両方で物語世界を表現する才能を発揮しました。晩年は再びフロリダ州ジャクソンビル近郊で暮らしています。

カニグズバーグの作品は、登場人物の豊かな内面や、子供たちの視点から描かれる世界の不思議さ、そして知的なユーモアが特徴です。時にはレオナルド・ダ・ヴィンチと「モナリザ」の制作過程を巡る『ジョコンダ夫人の肖像』のように、歴史上の出来事や人物を独自の解釈で物語に取り入れることもありました。ルイーザ・メイ・オルコットやフランシス・ホジソン・バーネットといった先行世代の作家たちから影響を受けたことを語っています。

日本においては、岩波書店がその主要な作品を多数紹介しています。特に岩波少年文庫では、『クローディアの秘密』や『ティーパーティーの謎』をはじめ、『エリコの丘から』、『800番への旅』、『魔女ジェニファとわたし』といった代表作が刊行され、多くの読者に親しまれています。また、作品集や講演集も出版されており、日本でもその文学世界は広く紹介されています。

2013年4月19日、エレイン・ローブル・カニグズバーグは、バージニア州フォールスチャーチにて呼吸不全のため83歳で逝去しました。しかし、彼女が生み出したウィットと洞察に満ちた物語は、児童文学の古典として、今なお読み継がれています。

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