EDIF

EDIF(イーディフ)とは

EDIF（Electronic Design Interchange Format）は、電子設計データの交換を目的としたファイルフォーマットです。主に電子回路の設計データ、具体的には回路図やネットリスト（配線情報）を表現するために用いられます。異なるEDA（電子設計自動化）ツール間でデータをやり取りする際に、共通のフォーマットとして機能し、データ変換の手間を大幅に削減します。

EDIF以前の課題

EDIFが登場する以前は、各EDAベンダーが独自のデータ形式を使用していました。これにより、あるベンダーのツールで作成した設計データを別のベンダーのツールで利用することが困難でした。ベンダー間のデータ互換性の欠如は、設計者にとって大きな課題でした。例えば、あるシステムから別のシステムにデータを移行する際には、個別の変換プログラムを開発する必要があり、これは非常に複雑でコストがかかる作業でした。

もし、N個のフォーマットが存在する場合、その間でデータを相互変換するためには、N²個の変換プログラムが必要になり、この問題はEDA業界にとって深刻な課題でした。

EDIFの誕生

このような状況を解決するために、共通の中立的なフォーマットであるEDIFの開発が始まりました。1983年11月には、デージー・システムズ、メンター・グラフィックス、モトローラ、ナショナル・セミコンダクター、テクトロニクス、テキサス・インスツルメンツ、カリフォルニア大学バークレー校の代表が集まり、EDIF運営委員会が結成されました。

EDIFの文法

EDIFの構文は、LispのS式をベースにしています。バージョンによって細かな違いはありますが、基本的な構造は共通です。

- EDIF 2.0.0では、キーワード（library、cell、instanceなど）、文字列（ダブルクォートで囲まれたもの）、整数、記号定数（GENERIC、TIE、RIPPERなど）が基本的な構成要素です。
- ラベルには、予約された文字列以外の文字列が使用可能です。
- EDIF 3.0.0および4.0.0では、キーワードを優先し、記号定数は完全に廃止されました。

EDIFのバージョン

EDIFは、複数のバージョンを経て進化してきました。

- EDIF 1.0.0: 1985年にリリースされた初期バージョンです。
- EDIF 2.0.0: 1988年3月にANSI/EIA-548-1988として承認され、最初の公式リリースとなりました。このバージョンは書籍として出版されました。
- EDIF 3.0.0: 1993年9月にリリースされ、EIA-618の認証を受け、後にANSIとISOの認証も取得しました。このバージョンは4巻の書籍として出版されました。
- EDIF 4.0.0: 1996年後半にリリースされました。EDIF 3.0.0にプリント基板対応の拡張が加えられ、サイズが2倍以上に増加しました。CD-ROMまたはHTML形式で公開されました。

EDIF 2.0.0の問題点

EDIF 2.0.0には、いくつかの問題点がありました。特に、EDAベンダー間の競争が激しかった時代背景が影響しています。

- データ形式の独自性: 各EDAベンダーは、顧客を囲い込むために独自のデータベース形式を採用していました。これにより、あるベンダーのツールで作成した設計データを別のベンダーのツールで利用することが困難になり、設計者は特定のベンダーに縛られていました。
- EDIFの「風味」: EDIF 2.0.0の仕様は、意味論的なルールが緩く、同じ情報を表現するのに複数の方法が存在しました。これが「EDIFの風味」と呼ばれるもので、ベンダーごとに異なる解釈を許容し、データ互換性を損なう要因となりました。
- ベンダーの消極性: EDAベンダーは、EDIFの読み込み（リーダー）機能には積極的でしたが、書き込み（ライター）機能の開発には消極的でした。これは、他のベンダーから顧客を奪うためには読み込み機能が重要であり、自社の顧客が他のベンダーへ移行することを防ぐために書き込み機能は軽視されたためです。

まとめ

EDIFは、電子設計データの交換を円滑にするための重要なフォーマットです。特にEDAベンダー間のデータ互換性の問題を解決し、設計者がツールを自由に選択できる環境を提供しました。しかし、初期のバージョンにはいくつかの課題も存在し、業界全体でこれらの課題を克服するための努力が続けられました。EDIFの進化は、電子設計業界の発展に大きく貢献しています。

例

(edif test_edif
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(edifLevel 0)
(keywordMap (keywordLevel 0))

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