Elm (プログラミング言語)

Elmは、Webブラウザ上で動作するグラフィカルユーザインタフェースを構築するために特化したドメイン固有のプログラミング言語です。純粋関数型言語として、ユーザビリティ、パフォーマンス、そして堅牢性を重視して設計されています。特に、静的かつ強力な型検査によって、実行時の例外が事実上発生しないことを大きな特徴としています。

歴史

Elmは2012年にEvan Czaplicki氏の修士論文として誕生しました。初期のリリースでは、サンプルコードとオンラインエディタが提供され、ブラウザ上で手軽に試すことができました。Czaplicki氏は、Elmの開発のために2013年にPrezi社に入社、2016年からはオープンソースエンジニアとしてNoRedInkに所属し、同時にElmソフトウェア財団を設立しました。

初期のElmコンパイラはHTML、CSS、JavaScriptをターゲットとしていましたが、その後、REPL（対話型評価環境）、パッケージマネージャー、タイムトラベルデバッガー、そしてMacとWindows向けのインストーラーなど、開発ツールが拡充されてきました。さらに、コミュニティによって作成されたライブラリのエコシステムも形成されています。

特徴

Elmは、if式、let式、case式、匿名関数といった、表現力豊かな少数の言語構成要素で構成されています。主な特徴として、不変性、静的型付け、そしてHTML、CSS、JavaScriptとの相互運用性が挙げられます。

不変性

Elmでは、すべての値はイミュータブル（不変）であり、一度作成された値を後から変更することはできません。この不変性は、プログラムの安定性と予測可能性を高める重要な要素です。Elmは永続データ構造を用いて、Array、Dict、Setなどのライブラリを実装しています。

静的型

Elmは静的型付け言語であり、すべての定義にその値を正確に表現する型注釈を付けることができます。型には、整数や文字列などのプリミティブ型、リストやタプル、拡張レコードなどの基本的なデータ構造、そしてタグ付きユニオンと呼ばれるカスタム型が含まれます。Elmは完全な型推論をサポートしており、コンパイラは型注釈がなくても型安全性を検証できます。

モジュールシステム

Elmにはモジュールシステムがあり、コードをモジュールと呼ばれる小さな単位に分割できます。これにより、値のインポート・エクスポートが可能になり、実装の詳細を隠蔽し、他の開発者が意識する必要がなくなります。このモジュールシステムは、Elmコミュニティライブラリの基盤となっています。

HTML、CSS、JavaScriptとの相互運用

Elmは「ポート」と呼ばれる抽象的な仕組みを用いてJavaScriptと連携できます。これにより、ElmとJavaScript間でデータをやり取りすることが可能です。また、elm/htmlライブラリを使用することで、Elm内部でHTMLやCSSを扱うことができます。このライブラリはVirtual DOMを利用して効率的な更新を行います。

制限

HaskellやPureScriptとは異なり、Elmは型クラスをサポートしていません。そのため、多くの共通処理を抽象化することはできません。例えば、`map`、`apply`、`fold`、`filter`といった汎用的な関数はなく、代わりに`List.map`、`Dict.map`のように、それぞれのモジュール名でプレフィックスをつけて使用します。

ツール

オンラインエディタ: 簡単な確認用として、elm-lang.org/try が提供されています。
ローカルへのインストール: Install Elm を参照してください。
学習用リソースとサンプル集: 公式サイトにて提供されています。
コアライブラリとコミュニティライブラリ: 様々な機能を提供するライブラリが充実しています。
サンプルコード: 公式サイトやコミュニティで公開されています。

脚注

外部リンク

公式ウェブサイト

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