F字孔

f字孔（f-hole）とは

f字孔とは、ヴァイオリン属やヴィオール属の楽器において、表板の中央付近に左右対称に開けられた穴のことを指します。その形状がイタリック体の「f」に似ていることから、この名前が付けられました。

f字孔の役割

f字孔は、単なる装飾ではなく、楽器の音響特性に深く関わる重要な要素です。

音響効果: f字孔は、楽器内部の空気振動を外部に放出する役割を担い、音量や音質に影響を与えます。f字孔の形状や大きさによって、楽器の音色は大きく変化します。
楽器内部へのアクセス: f字孔は、楽器内部に貼られた製作者のラベルを確認したり、ヴァイオリン属の楽器においては、魂柱を立てる作業を行うための開口部として利用されます。
駒の位置決め: 弦を支える駒は、f字孔の中央部分にある切り欠きに合わせて設置されるため、f字孔は組み立て時の正確な位置を示す役割も果たします。

f字孔の形状と歴史

現在の「f」字型のf字孔は、16世紀以降にイタリアで製作された楽器から見られるようになりました。それ以前のヴィオラ・ダ・ガンバなどのヴィオール属楽器では、C字に近い形状のf字孔が用いられていました。

f字孔の由来

なぜ「f」の字なのかについては、いくつかの説があります。

強度説: f字型が構造的に優れているため採用されたという説
女性説: 女性を意味する英単語「female」の頭文字から取られたという説
装飾説: より華やかな装飾を追求する過程で生まれたという説

これらの説のうち、どれが正しいかは定かではありません。

他の楽器への応用

f字孔は、ヴァイオリン属以外の楽器にも応用されています。内部が空洞になっているホロウボディギターには、f字孔が穿たれていることがあります。また、ギタリストの中には、自身のモデルにダミーのf字孔を描いたり、f字孔のないホロウギターにf字孔をペイントしたりする人もいます。

ヴァイオリン族以外の楽器では、f字孔の横棒が省略され、積分記号のような形状で表現されることもあります。

f字孔は、弦楽器の音響特性を左右するだけでなく、楽器のデザインにおける重要な要素の一つとなっています。

もう一度検索