F項パージ

F項パージとは

F項パージは、1955年から1956年にかけて実施された教科用図書検定に関する出来事で、社会科教科書の中から評価を受けながらも「偏向」とされ不合格とされた教科書が多数存在した問題を指します。この事件は、1957年からの使用を目指していた教科用図書の検定過程の中で発生しました。

当時の教科書検定のシステムは、AからEまでの5段階評価の中で行われ、匿名の調査員5名によって採点される方式が採用されていました。しかし、多くの教科書が合格基準に達していたにもかかわらず、「F」という一つの意見により不合格にされる事例が相次いだことが、この問題の核心です。この「F項パージ」という表現は、メディアから生まれた言葉であり、GHQが1946年に発表した「公務従事に適しない者の公職からの除去に関する件」に由来しています。当時、GHQは特定の基準で公職にふさわしくない者を分類しましたが、F項の内容は教科書とは無関係でした。

F項の署名とその影響

「F」の署名が誰であるかについては、高山岩男という人物の名前が特に噂されていました。後に家永三郎が提起した教科書裁判の中で、1970年に東京地裁はこの問題について言及し、Fという意見が高山岩男のものであるとする噂が流布していたことを確認しています。しかし、文部省はFの意味を、当時の検定システムが変更されたことによる結果であり、特定の人物に帰するものではないと述べています。

教科書への圧力

背景として、1955年に日本民主党が「国定教科書の統一」を公約に掲げ衆議院で第一党となったことがあります。彼らは教科書が左傾化しているとし、パンフレット『うれうべき教科書の問題』の中で具体的な教科書名を挙げ、労働組合運動や社会主義国を賛美する内容に強く反発しました。このキャンペーンは、社会の多くの層から反発を招いたため、文部省は教科書検定の強化に向けた圧力を受けることとなったのです。

不合格理由の具体例

徳武敏夫が挙げた不合格理由には、以下のような具体的な指摘が含まれます。例えば、「新憲法が国民の総意によって作られた」という表現が一方的だとされ、また「サンフランシスコ条約などがすべての国民の希望によって生まれたとは限らない」という内容が不適切とされました。他にも、歴史記述が科学的すぎるとの批判や、太平洋戦争に関する表現はよりロマンチックにすべきとの意見などが挙げられています。

後の影響

その後、1960年代に入ると、村尾次郎が文部省の主任教科書調査官となり、皇国史観に基づいた厳しい検定を実施しました。この動きは「M項パージ」という呼び名で知られるようになりました。これにより、教科書検定が一層厳しくなり、教育現場における思想的影響が強まる結果となりました。

まとめ

F項パージは、教科用図書の検定における一つの象徴的な事件であり、当時の文部省及び政界による教育への干渉を示す重要な出来事とされています。この現象は、教科書の内容がただの教育的仕様にとどまらず、それに関連する政治的背景や社会的動向にも影響を受けることを示しています。

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