F-82 (航空機)

P-82 ツインマスタング

ノースアメリカン社が開発したP-82 ツインマスタング（正式名称：North American P-82 Twin Mustang）は、アメリカ空軍が運用したレシプロ双発の複座型戦闘機であり、その愛称は二つのP-51マスタングを連結したことに由来します。この機体は1947年にF-82へと改称され、日本語表記では「ツインムスタング」とも呼ばれます。

背景と開発の経緯

第二次世界大戦中、アメリカ陸軍航空軍は長距離戦闘機の必要性を強く感じていました。特に、爆撃機を護衛するための長距離戦闘機が求められていました。当時の主力機種であるP-51やP-38、P-47などは単座機であり、パイロットは長時間にわたり一人で操縦し続ける必要がありました。このような状況を改善するために、複座戦闘機が求められるようになりました。

ノースアメリカン社は、2機のP-51を連結した双胴式の戦闘機（内部モデル名：NA-120）としてP-82を開発することに決定しました。1944年1月に陸軍航空軍から3機の試作機が発注され、続いて量産型P-82Bが500機発注されましたが、その後の戦争終結によって数は減少し、最終的に100機が発注されました。

仕様と特長

P-82は主にP-51Fの主翼と水平尾翼を連結し、双発のレシプロエンジンを搭載しています。コックピットは2つあり、パイロットが交代で操縦することができます。エンジンにはパッカード・マーリンV1650が用いられましたが、試作機では初飛行に失敗しました。原因は振り上げ後流が内翼に当たったことによる予期しない抵抗でしたが、改修により左右のエンジンの入れ替えが行われました。

また、機銃は内翼に6丁装備され、外翼には設置されていません。機体のサイズが大きくなったものの、P-51に劣らない性能を持ち続けました。その後、より高出力のアリソンV1710エンジンへと変更されました。

運用と活躍

P-82の試作機XP-82は1945年に初飛行し、戦後の1948年からは部隊配備が行われました。特にP-82E型は長距離戦闘機として運用され、旧式のP-61戦闘機の後継として夜間戦闘機型も配備されることとなりました。この機体は特に朝鮮戦争において、F-86セイバーなどのジェット機が活用されにくい状況下で重要な役割を果たしました。

夜間戦闘機型では、右側の操縦席がレーダー手席に改造されており、中央部主翼の下には増槽型のレーダーユニットが搭載されました。この装置は胴体着陸時に投下可能なため取り外し式でしたが、高G機動時に落下することがありました。

機体の功績

1947年3月28日には「ベティ・ジョー」と名付けられたP-82Bが、ホノルルからニューヨークまでの8,129 kmを無着陸で飛行し、14時間32分で達成するという記録を打ち立てました。これはレシプロ戦闘機による無給油の最長飛行記録であり、今後破られることはないと考えられています。

各型

• - XP-82：試作機、V-1650エンジン搭載。
• - P-82E：長距離戦闘機の量産型、1946年に100機製造。
• - P-82F/G：夜間戦闘機型の量産型。
• - F-82H：寒冷地向けの仕様。

メディアでの登場

ツインマスタングは、ゲームや漫画、アニメなど多くのメディアで取り上げられています。例えば、ゲーム『War Thunder』ではプレイヤーが操作する機体として登場し、アニメ『SPY×FAMILY』にもその姿が確認できます。さらに、小説『ツイン・ムスタング出撃せよ』では朝鮮戦争での活躍が描かれています。

P-82 ツインマスタングは、アメリカの航空機の中でもユニークな存在であり、その歴史的な重要性は今に至るまで評価されています。

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