FG-15

FG-15

FG-15は、中華人民共和国において開発された固体燃料ロケットモーターの一種であり、特に人工衛星の軌道投入に使用されるアポジキックモーターとして設計されました。DFH-2 AKMやSpaB-170といった別称でも知られています。本機は、衛星の最終的な軌道、特に静止軌道へ正確に到達させるために極めて重要な役割を担いました。開発は、中国の宇宙開発を担う主要機関の一つである中国河西化工機械公司によって行われました。同社は、中国航天科工集団公司（CASIC）の第六研究院としても位置づけられています。

このモーターの主な目的は、中国が開発した東方紅2号シリーズの人工衛星バスを、遷移軌道から目的の静止軌道へ投入するための推進力を供給することでした。衛星打ち上げにおいて、ペイロードを目標軌道に乗せる最終段階で用いられることで、その性能と信頼性が人工衛星のミッション成功に直結します。

FG-15は、推進剤としてHTPB（ヒドロキシル基末端ポリブタジエン）を燃焼させる方式を採用しています。これは固体ロケット推進剤として広く使用されているタイプです。また、機体自身を回転させることで飛行中の姿勢を安定させる「回転安定式」を採用しており、これは比較的シンプルながら効果的な姿勢制御方法です。

エンジンの構造には、中国国内で培われた固体燃料ロケット関連の技術が投入されています。筐体は軽量かつ強度に優れたグラスファイバーで巻き固められています。ノズル部分には、燃焼時の高熱に耐えるために炭素/炭素複合材が内張りとして使用されています。また、推力効率を高めるための等圧拡散ノズルや、推進剤の充填状態や品質を確認するための非破壊検査技術なども応用されています。これらの技術は、当時の中国における固体ロケット産業の技術水準を示すものです。

性能面では、FG-15は以下のような諸元を持ちます。

総定格重量: 580 kg (約1,280 ポンド)
推進剤重量: 505 kg (約1,113 ポンド) - 総重量の約87%を推進剤が占めます。
燃焼後重量: 75 kg (約165 ポンド)
平均推力: 40.9 kN (約9,200 重量ポンド)
比推力: 289 秒 - 推進剤1単位質量あたりが発生できる推力を示す指標です。
燃焼時間: 35 秒 - 軌道投入に必要な短時間で強力な噴射を行います。
力積: 1.432 MN (約322,000 重量ポンド秒) - エンジンが生成する推進力総量の指標です。

これらの数値は、静止軌道への効率的な投入に必要なエネルギーを提供できるよう最適化されていたことを示しています。

FG-15はその運用において、いくつかの飛行実績を重ねました。最初のバージョンであるFG-15は、東方紅2号衛星バスに搭載され、2回の軌道投入ミッションに使用されました。その後、改良型であるFG-15Bが登場し、これは東方紅2号A衛星バスと共に運用されました。FG-15Bは、合計で5回の飛行に成功しています。これらを合わせると、FG-15系列モーターは少なくとも7回の静止軌道投入ミッションに貢献したことになります。

FG-15およびその改良型は、中国が自国の通信衛星などを静止軌道へ打ち上げる能力を確立する上で、重要な推進システムとして機能しました。長征3号ロケットによって打ち上げられた東方紅2号/2A衛星の成功は、このアポジモーターの信頼性によって支えられていたと言えます。

関連項目

中国河西化工機械公司
東方紅2号
長征3号

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