FIRE ムーブメント

FIREムーブメントとは

FIREムーブメント（Financial Independence, Retire Early）は、経済的自立と早期退職を目標とするライフスタイル、またはその思想を啓蒙するムーブメントです。アメリカで生まれ、ヨーロッパや日本を含む世界中に広がりました。ブログやポッドキャストなどのオンラインプラットフォームを通じて情報が共有され、特にミレニアル世代を中心に注目を集めています。

FIREの達成方法

FIREを達成するための基本的な方法は、収入を増やし、支出を減らすことで貯蓄率を最大化することです。これにより、生涯の支出を賄うのに十分な不労所得を得ることを目指します。多くのFIRE支持者は、退職後の資産の取り崩しについて「4%ルール」を提唱しており、年間生活費の25倍以上の貯蓄を目標としています。日本では、資産1億円を目標とする意見もあります。

経済的独立を達成すると、労働収入は必須ではなくなり、一般的な定年よりも大幅に早い時期に退職することが可能になります。FIRE達成のためには、以下の2つを両立させる必要があります。

1. 高い貯蓄率を維持し、年間生活費の25年分を貯蓄すること。
2. 投資のインフレ調整後の利回りを4%以上にすること。

FIREの目的は、労働から解放され、自分のやりたいことに時間を使うことです。また、介護離職に備えるという側面もあります。完全に退職するのではなく、ある程度仕事を続けながら資産の目減りを抑える「サイドFIRE」というスタイルも存在します。

FIREの背景

FIREは、一般的なファイナンシャルプランナーが推奨する10〜15%を大きく上回る貯蓄率で達成されます。収入と支出が一定であると仮定し、投資収益を考慮しない場合、貯蓄率と退職までの年数の関係は以下のようになります。

貯蓄率10%：1年分の生活費を貯めるのに9年間の労働所得が必要
貯蓄率25%：1年分の生活費を貯めるのに3年間の労働所得が必要
貯蓄率50%：1年分の生活費を貯めるのに1年間の労働所得が必要
貯蓄率75%：1年分の生活費を貯めるのに約0.33年間の労働所得が必要

この例からわかるように、貯蓄率が上がるほど退職までの時間が大幅に短縮されます。そのため、FIREを目指す人々は、収入の50%以上を貯蓄しようとします。貯蓄率が75%の場合、「4%ルール」に基づいた生活費25年分の貯蓄は10年もかかりません。

投資利回りと必要な年数の計算

投資利回りはインフレ調整後の実質利回りです。貯蓄率をp、投資利回りをr、必要な年数をxとすると、以下の式でxを求めることができます。


x = ln(1 + 25 (1/p - 1) ln(r)) / ln(r)


ただし、この計算式はアメリカのインフレ率と株式市場の成長率を基にしており、他の地域では当てはまらない場合があります。

4%ルールとは

資産の取り崩し方として、一般的に「4%ルール」が提唱されています。このルールは、初期資産の4%を毎年取り崩した場合、少なくとも25年間は資産が枯渇しない可能性が高いというものです。トリニティ大学の研究によると、過去のデータに基づくと、アメリカ居住者が株式と債券で資産運用し、インフレを考慮して毎年4%を取り崩した場合、25年後には資産が残る確率は100%、30年後でも98%という結果が出ています。しかし、ジェレミー・シーゲルの調査では、株式の比率を68%にすることで、よりリスクを低減できる可能性が示唆されています。

FIREの歴史

FIREムーブメントの思想は、1992年に出版されたVicki RobinとJoe Dominguezによるベストセラー「Your Money or Your Life」や、Jacob Lund Fiskerによる2010年の「Early Retirement Extreme」に遡ります。これらの作品では、投資収入と質素な生活を組み合わせることで経済的自立を達成できるという考え方が示されました。特に「Early Retirement Extreme」では、貯蓄率と退職時期の関係について詳細に説明しています。

2011年には、ブログ「Mr. Money Mustache」が早期退職への関心を高め、FIREムーブメントの普及に大きな影響を与えました。その後、多くのブログやポッドキャストでFIREの概念が議論され、発展を続けています。2018年には、主要メディアで大きく報道され、FIREムーブメントの認知度が高まりました。

FIREへの批判

高い貯蓄率の難しさ

FIREムーブメントは、高い貯蓄率を要求するため、「高所得者向けである」という批判があります。低所得者がFIREを達成するのは困難であるという意見も存在します。

投資利回り4%の難しさ

また、FIREを達成するために必要な投資利回り4%も、常に達成できるとは限りません。退職後の期間が長くなると、4%ルールの妥当性が疑問視されることもあります。過去のデータでは、株式の利回りは高い水準で推移していましたが、将来も同じ状況が続くとは限りません。債券だけでは十分なリスクテイクができないため、株式への投資比率を高める必要性も指摘されています。

まとめ

FIREムーブメントは、経済的自立と早期退職を目指すライフスタイルです。高い貯蓄率と投資によって達成されますが、その実現には様々な課題も存在します。FIREを目指す場合は、自身の状況を考慮し、慎重に計画を立てることが重要です。

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