FM-X

FM-Xとは

1983年、総合電機メーカーである富士通は、MSX規格に準拠したパーソナルコンピュータ「FM-X」を市場に投入しました。これは、同社が手がけたMSXとして唯一のモデルであり、その存在は多くのコンピュータ愛好家の間で記憶されています。

基本構成

FM-Xは、当時の普及価格帯MSXとして標準的な仕様を備えていました。カートリッジスロットは1基を搭載し、メインメモリとして16キロバイトのRAMを実装しています。これにより、基本的なMSX用ソフトウェアの利用が可能でした。

独自拡張とFM-7との連携

FM-Xの最大の特色は、独自の拡張スロットを通じて、同社の主力機種であったパーソナルコンピュータFM-7との連携機能を持っていた点にあります。この接続インターフェースを介して、FM-XとFM-7は互いに協調しながら動作し、単体では得られない様々な機能を利用することができました。

FM-XからFM-7の機能を利用

FM-7側のメモリ空間を、FM-Xの増設メモリとして活用できます。これにより、FM-Xのメインメモリを32キロバイトまで拡張することが可能になり、より多くのメモリを必要とするアプリケーションに対応できるようになります。
オプションのパラレルインターフェイスを接続している場合、FM-7をプリンターのバッファとして利用し、印刷中の待ち時間を短縮できます。
FM-7が持つシリアルポートを、FM-Xから制御して使用できます。
FM-7の特定のキー入力の一部を、FM-X側で認識して利用できます。
「CALL MON」コマンドを実行することで、FM-7側に実装されたマシン語モニタ機能へアクセスできます。
FM-7とFM-X間でPSG（Programmable Sound Generator）を共有し、合計6音の同時発音による豊かなサウンド表現が実現します。

FM-7からFM-Xの機能を利用

FM-7のデジタルRGB出力をFM-XのデジタルRGB入力端子に接続することで、FM-Xが持つスプライト機能をFM-7側から利用できるようになります。これにより、ゲーム開発などにおいて、ハードウェアによるスプライト描画の恩恵を受けられます。
FM-XとFM-7間でPSGを共有し、両機種から合計6音の同時発音が可能になります。
FM-Xに接続されたジョイスティックを、FM-7側から操作入力として利用できます。
両機種に搭載されたCPUに加え、FM-7のサブCPUも活用する「3CPU協調動作」という高度な連携を実現できました。

映像出力の特性

FM-Xは、FM-7との連携を考慮した結果、MSX規格機としては極めて珍しいデジタル方式のRGB映像出力を備えていました。この出力端子は、同社のFMシリーズと共通の仕様であり、FMシリーズ用のディスプレイをそのまま利用できるという利便性をもたらしました。しかし、このデジタルRGB出力は、MSX規格で定められている16色表示に対応しておらず、FMシリーズと同様の8色表示に留まっていました。MSX本来の色表現をRGB出力で楽しむことはできなかったのです。

ただし、これはMSX規格に違反するものではありませんでした。MSX規格では、映像出力としてRF出力、ビデオ出力、アナログRGB出力のいずれかを備えていれば良いとされており、FM-XはRF出力端子も搭載していたため、この点は規格に準拠していました。また、規格外のハードウェア拡張に関しても特に制限は設けられていなかったため、デジタルRGB端子を持つこと自体が問題とされることはありませんでした。

まとめ

FM-Xは、富士通が唯一開発したMSXとして、標準的な基本性能に加え、同社のFM-7シリーズとの強力な連携機能というユニークな特徴を持っていました。特に、FM-7のハードウェア資源をMSX側から活用したり、逆にFM-7からMSXの機能を操作したりできる協調動作は、当時の他のMSX機には見られない大きな強みでした。映像出力に独自の仕様が見られた点も、FMシリーズとの互換性を追求した結果であり、その設計思想を物語っています。短い期間の販売でしたが、富士通らしい独創性が光る一台と言えるでしょう。

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