FM16π

FM16π：富士通が放った野心作、そして市場の反応

1985年、富士通は携帯性に優れたハンドヘルドコンピュータ、FM16πを発表しました。A4サイズ、2.9kgという可搬性と、当時のデスクトップPCに匹敵する処理能力を両立させた革新的な一台でした。

高性能と日本語処理能力

FM16πは[Intel 8086]]互換CPU]を搭載し、メインRAMは128KB～448KBまで拡張可能でした。ROMにはJIS第一水準漢字と単語変換辞書が内蔵され、640x200ドットの[[液晶ディスプレイで表示していました。最大3時間駆動するニッケルカドミウムバッテリー内蔵で、場所を選ばず使用できる設計です。OSはCP/M-86|CP_M-86を採用しており、BASICやCOBOLといったプログラミング言語は別売のROMカートリッジから利用できました。キーボードはJIS標準配列準拠の75キーと50音配列の106キーの2種類が用意されていました。

充実したインターフェースと周辺機器

3.5インチフロッピーディスクドライブ（320KB）、マイクロカセットテープ、プリンタ、RS-232Cインターフェース、そしてバーコードリーダーインターフェースなど、周辺機器との接続性も考慮された設計でした。マイクロカセットテープは78～153.5KBの容量で、通信速度は1300～1800bpsでした。

ビジネスシーンでの課題と市場の反応

FM16πは高い性能を誇りましたが、OSにCP/M-86|CP_M-86を採用したことや、補助記憶装置にカセットテープを採用した点が、ビジネス用途においては時代遅れと捉えられました。結果として、対応ソフトの少なさも相まって、市場での大ヒットとはなりませんでした。

主な用途としては、企業におけるオンライン端末や専門学校の指定パソコンとして活用された事例が見られます。当時のライバル企業であった日本電気は、国内市場の未成熟さを理由に、FM16πの発売を静観していました。

後継機と富士通のラップトップ戦略

FM16πの後継機は発売されず、富士通が本格的にラップトップ市場に参入するのは1988年発売のFMR-10LTまで待たなければなりませんでした。FM16πは富士通のモバイルコンピューティングへの挑戦を象徴する機種と言えるでしょうが、市場のニーズと技術革新のスピードに対応しきれなかった一面も示しています。

技術仕様詳細

FM16πは、その先進性と制約が複雑に絡み合った、日本のコンピュータ史における重要な一製品と言えるでしょう。

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