FNS音楽特別番組 上を向いて歩こう 〜うたでひとつになろう日本〜

FNS音楽特別番組 上を向いて歩こう 〜うたでひとつになろう日本〜：詳細解説

2011年3月11日に発生した東日本大震災。未曾有の大災害は日本社会に大きな爪痕を残し、人々の生活を奪い、未来への不安を募らせました。その混乱の中、フジテレビは当初、3月27日に予定していた世界フィギュアスケート選手権の中継を、福島第一原子力発電所事故による放射能汚染と電力不足の懸念から断念せざるを得ませんでした。

そこで急遽編成されたのが、チャリティ音楽番組『FNS音楽特別番組 上を向いて歩こう 〜うたでひとつになろう日本〜』です。この番組は、被災者への支援と、国民に希望と勇気を届けることを目的として、わずか数日の準備期間で制作されました。

番組制作の背景には、関係者の迅速な連携と決断がありました。当初予定されていた番組がなくなったという緊急事態の中、関係者は代替番組の企画に奔走しました。特に、松任谷由実とMr.Childrenという人気アーティストの出演は番組の成功に大きく貢献しました。当時、松任谷由実はラジオ番組の収録を予定しており、Mr.Childrenも宮城公演を中止していたため、スケジュール調整が可能だったのです。この二組を起用するというアイデアは、フジテレビのきくち伸氏から提案され、実現に繋がりました。

しかし、ただ単に音楽番組を放送するだけでは不十分だと考え、小田和正の提案によって、被災地でも視聴可能なようニッポン放送を通じてAMラジオでも同時放送されることになりました。岩手県、宮城県、福島県、茨城県のNRN加盟局にもネットされ、より多くの被災者に届くよう配慮が払われました。この試みは、テレビ放送だけでは届かない人々への配慮という点において、番組の意義をさらに高めるものとなりました。

番組タイトルの「上を向いて歩こう 〜うたでひとつになろう日本〜」は、当時のFNSの東日本大震災復興チャリティに対するスローガンが反映されています。出演アーティストのギャラは、日本赤十字社への義援金として全額寄付され、番組制作に関わった全ての人々の被災者への深い思いが感じられます。

司会は草彅剛（SMAP）と高島彩が務め、54組のアーティストにオファーが送られ、27組のアーティストが出演しました。番組内では、アーティストたちが被災者に向けて直接メッセージを送り、音楽を通して希望を届ける姿が印象的でした。番組終了後には、岩手県出身のきくち氏が感極まって号泣しながら出演者への感謝を述べたというエピソードも伝えられています。

この番組は、単なる音楽番組という枠を超えて、国民的な連帯感を高め、被災地の復興を支援する重要な役割を果たしました。テレビとラジオの同時放送という試み、出演アーティストの献身的な協力、そして番組スタッフの迅速な対応。全ての要素が奇跡的に合致したことで、この感動的なチャリティ番組が誕生しました。

本番組は、FNS歌謡祭、FNSうたの春まつり、緊急生放送! FNS音楽特別番組 春は必ず来るといった、フジテレビが制作する他の音楽特別番組とも関連性があります。これらの番組と同様に、音楽を通して人々を繋ぎ、希望を届けるという共通の理念が、本番組にも脈々と受け継がれていると言えるでしょう。また、草彅剛と高島彩は、音楽番組『僕らの音楽 -OUR MUSIC-』でもナレーターを務めており、音楽番組への深い関与が伺えます。

『FNS音楽特別番組 上を向いて歩こう 〜うたでひとつになろう日本〜』は、東日本大震災という未曽有の災害の中で生まれた、希望と勇気の物語です。この番組は、災害への対応、そして被災者への支援という点で、後世に残すべき貴重な記録として、記憶に刻まれるべきでしょう。

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