FORMOSAT-5

FORMOSAT-5（フォルモサット5号）は、台湾が2017年に軌道へ投入した人工衛星です。この衛星は、台湾が設計から製造まで独自に行った初めての宇宙機であり、同国の宇宙開発技術における重要な成果を示すものです。FORMOSAT-5は、地球の陸域・海域を観測するリモートセンシング衛星としての機能と、地球を取り巻く電離層の物理状態を調査する科学衛星としての機能を併せ持っています。

開発経緯

FORMOSAT-5の開発計画は、先行する地球観測衛星FORMOSAT-2の運用終了を見据え、2005年に始まりました。FORMOSAT-2は主に海外企業によって開発されましたが、FORMOSAT-5では台湾国家宇宙センター（NSPO）が推進する長期計画の一環として、衛星技術の国産化と国内産業・学術機関の技術力向上に重点が置かれました。NSPOが全体の統括を行い、台湾国内の大学、研究機関、企業が連携する形で開発が進められました。開発および製造にかかった総費用は、約56億5900万台湾元に上ります。

衛星の概要

衛星本体は八角柱の構造をしており、外径1.6メートル、高さ2.8メートルの大きさです。燃料を含んだ打ち上げ時の質量は475キログラムでした。

ミッション内容

FORMOSAT-5のミッションは主に二つあります。

地球観測：FORMOSAT-2の後継として、高解像度の光学画像を取得します。これらの画像データは、台湾および世界の環境監視、災害発生時の被害状況把握、国家の安全保障、そして都市計画など、様々な公共分野における利用が想定されています。
電離層観測：地球の上層大気に位置する電離層におけるプラズマイオンの変動を詳細に観測します。この科学データは、地震活動との関連性の研究や、人工衛星の運用に影響を与える宇宙天気予報の精度向上に役立つ新たな知見をもたらすことが期待されています。

打ち上げ

FORMOSAT-5は、アメリカ合衆国のカリフォルニア州にあるヴァンデンバーグ空軍基地から、スペースX社のファルコン9フル・スラストロケットによって打ち上げられました。当初は2016年の打ち上げが予定されていましたが、同年9月に発生したファルコン9ロケットの爆発事故の影響を受け、スケジュールに約1年の遅延が生じました。最終的に、台湾標準時2017年8月25日午前2時51分に成功裏に軌道へ投入されました。

主要搭載機器

FORMOSAT-5には、その多機能ミッションを遂行するために二つの主要な科学機器が搭載されています。

リモートセンシング・イメージャ (RSI)：
地球表面を撮影するための高解像度光学カメラです。観測幅は24キロメートル。取得できる画像の解像度は、白黒画像（パンクロマチック）で2メートル、カラー画像（マルチスペクトル）で4メートルです。マルチスペクトル観測は、青、緑、赤の可視光3バンドと近赤外線の合計4バンドで行われます。集光部には口径45センチメートルのカセグレン望遠鏡を採用し、センサーには光学衛星として初めてCMOSイメージセンサが導入されました。画像を生成するために、衛星の進行方向と直交する帯状の領域を連続的に撮影し、それらを合成するプッシュブルーム方式が採用されています。この機器は、NSPOを中心に、国家実験研究院（NARLabs）傘下の計器技術研究センター（ITRC）など国内研究機関や、漢翔航空工業を含む台湾企業が共同で開発しました。
先進電離層測定プローブ (AIP)：
電離層のプラズマ特性（密度、温度、速度など）を測定するための科学機器です。ラングミュア探針、逆電位アナライザ、イオントラップ、イオンドリフトメーターといった複数の観測機能を持ち、モードを切り替えながら詳細なデータを収集します。装置本体は一辺およそ10センチメートルの立方体に近い直方体で、アルミニウム合金に金がコーティングされています。そのコンパクトで特徴的な外観から、「宇宙キューブ」という愛称がつけられています。このプローブの開発は、台湾国立中央大学の宇宙科学研究所とオプトメカトロニクス研究所が担当しました。

FORMOSAT-5は、台湾の宇宙技術自立という国家目標を達成した象徴であるとともに、地球環境のモニタリングや災害対策、さらには宇宙科学のフロンティア開拓に貢献する多目的プラットフォームとして、重要な役割を果たしています。

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