FRONT MISSION

FRONT MISSION

『FRONT MISSION』は、1995年2月24日に日本のスクウェア（現在のスクウェア・エニックス）よりスーパーファミコン用ソフトとして発売されたシミュレーションロールプレイングゲームです。後に人気シリーズとなる『フロントミッションシリーズ』の最初の作品にあたります。

ストーリー

物語の舞台は、21世紀末に太平洋上に出現した「ハフマン島」。豊富な地下資源を巡り、二大超国家であるオシアナ共同連合（O.C.U.）とニューコンチネント合衆国（U.S.N.）が対立しています。特に、2093年6月3日に発生した「ラーカス事件」と呼ばれる軍事衝突を契機に、両国間で第二次ハフマン紛争が勃発します。

主人公は、このラーカス事件で婚約者カレン・ミューアを失い、軍籍を剥奪された元O.C.U.陸軍大尉、ロイド・クライブ。失意のうちにヴァンツァー闘技場で日銭を稼いでいた彼のもとに、O.C.U.陸軍のグーリー・オルソン大佐が現れます。正規軍の劣勢を打開するため、傭兵部隊「キャニオンクロウ」の隊長としてロイドを迎え入れようとするオルソン。カレンを殺したヴァンツァーへの復讐と彼女の行方、そして事件の裏に隠された真実を探るため、ロイドは再び戦いの渦中へと身を投じることを決意します。

ゲームシステム

本作の最も大きな特色は、プレイヤーが操作する人型機動兵器「ヴァンツァー」の高いカスタマイズ性です。ゲームの進行は、街や基地での情報収集や機体整備を行うインターミッションパートと、目的地へ移動して戦闘を行うパートで構成されます。

インターミッションでは、街のバーで様々な話を聞いたり、ショップでヴァンツァーのパーツや武器を購入したりします。購入したパーツは「セットアップ」で機体に組み付けます。

セットアップ（カスタマイズ）

ヴァンツァーは以下の主要なパーツで構成され、それぞれを自由に交換・強化できます。

ボディパーツ: 機体の胴体部。これが破壊されると、そのヴァンツァーは戦闘不能となります。各パーツの合計重量がボディの積載上限を超えないように注意が必要です。重量に余裕があると移動力にボーナスがつきます。
アームパーツ: 腕部。右腕と左腕は個別に設定でき、両腕が破壊されると攻撃ができなくなります。装備する武器の命中精度に影響します。マニピュレーターを持つ標準的な腕や、武器が内蔵された腕パーツなどがあります。
レッグパーツ: 脚部。機体の移動力に影響し、破壊されると移動力が大きく低下します。二脚型だけでなく、車輪型やキャタピラ型なども存在し、地形によって移動の得意・不得意があります。
コンピュータ: ヴァンツァーの反応速度を司り、命中率や回避率を向上させる効果があります。
バックパック: 機体の出力（積載上限）を増やしたり、搭載できるアイテム数を増やしたりするパーツです。

武器

武器は主に腕に装備するショットガン、マシンガン、ライフルなどの火器と、肩に装備するミサイルやロケットがあります。ミサイル・ロケットは弾数に限りがありますが、敵からの反撃を受けずに攻撃できる利点があります。

スキル

戦闘での行動によって経験値を獲得し、「ファイター」（格闘）、「アタッカー」（近距離）、「ミサイラー」（遠距離）の各系統に対応したスキルを習得・成長させることができます。これにより、特定の攻撃方法を強化することが可能です。

戦闘パートはターン制のシミュレーションで進行します。ヴァンツァーの各パーツには耐久力があり、敵の攻撃でダメージを受けて耐久力がゼロになると、そのパーツは破損し機能しなくなります。この部位破壊システムが、戦略に深みを与えています。

開発

本作はジークラフトが開発を担当しました。プロデューサーはメサイヤでの『超兄貴』などを手掛けた土田俊郎氏と、バンダイでの『ファミコンジャンプ』などを手掛けた橋本真司氏。ディレクターとシナリオは岩崎秀雄氏が務めました。音楽はカプコンで『ストリートファイターII』などを担当した下村陽子氏と、『バハムートラグーン』などを手掛けた松枝賀子氏が担当。キャラクターデザインは、『ファイナルファンタジー』シリーズで著名な天野喜孝氏が手掛けました。ただし、悪役であるドリスコルのキャラクターデザインは、発売直前に変更されたことが天野氏の画集などで語られています。また、開発時には一部のゲーム内グラフィックなどに、特定の隠語が紛れ込んでしまうといったエピソードも存在します（後に移植版で修正されています）。

移植とリメイク

オリジナル版発売後、本作は様々なプラットフォームへ移植・リメイクされています。

ワンダースワンカラー版: 2002年にスクウェア マスターピースの一つとして発売。SFC版に忠実な移植で、通信対戦モードなどが追加されました。
PlayStation版『フロントミッション ザ・ファースト』: 2003年に発売。グラフィックの向上や音楽のアレンジに加え、SFC版では描かれなかったU.S.N.側の視点による全く新しいシナリオが追加され、物語の深みが増しました。戦闘演出のカット機能も搭載されています。
ニンテンドーDS版: 2007年に発売されたPS版の追加要素搭載版。PS版の内容に加え、『フロントミッション』シリーズ他作品からゲストキャラクターやヴァンツァー、そして新規イベントやミッションが多数追加され、やりこみ要素も強化されています。
* Nintendo Switch版『フロントミッション・ザ・ファースト:リメイク』: 2022年より配信開始（後にパッケージ版も発売）。初のHDフルリメイクとして、グラフィックが3D化され、マップのカメラ操作などが可能に。基本的な内容はニンテンドーDS版をベースとしています。その後、PlayStation、Xboxファミリーなどにも展開されています。

評価

スーパーファミコン版は、ゲーム誌『ファミ通』のクロスレビューで31点を得てシルバー殿堂入りを果たしました。ワンダースワンカラー版も同様にシルバー殿堂を獲得しています。PlayStation版もクロスレビューで一定の評価を得ており、特にPS版で追加されたU.S.N.編シナリオは、単なる移植に留まらないボリュームと、物語の新たな側面を描いている点が高く評価されました。ただし、グラフィックや操作性については、SFC版からの移植ゆえに改善の余地があるという意見も見られました。

関連作品

スクウェアの同時期の作品である『ロマンシング サ・ガ3』には、本作の敵部隊「地獄の壁」をモチーフにした敵チームが登場するなど、当時の作品間でのクロスオーバーも見られました。また、本作をノベライズした小説『フロントミッション 最前線報告』も出版されています。

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