FUTURE WAR 198X年

『FUTURE WAR 198X年』

概要

『FUTURE WAR 198X年』は、1982年に日本で制作された劇場用アニメ映画で、冷戦の緊張状態を題材にした作品です。このアニメは、近未来の戦争の恐ろしさを描きつつ、映画『地獄の黙示録』や『復活の日』の要素を取り入れています。プロデューサーの吉田達は、戦争がかつてないほどリアルに、かつスタイリッシュに映し出されることに意義を見出していました。

制作には、『宇宙戦艦ヤマト』シリーズの実績を持つ舛田利雄と勝間田具治が監督として名を連ねています。また、有名なイラストレーター生頼範義がイメージイラストを担当しました。しかし、当初制作を担当予定だった東映動画は、労働組合のボイコットに遭い、制作が予定よりも困難を極めました。このため、作画などの多くは外注スタッフによって進められることとなりました。

あらすじ

物語は198X年、宇宙探査機ボイジャー2号が人類の平和のメッセージを宇宙で発信している中、冷戦下での緊張が高まりつつある世界から始まります。ソビエト連邦の潜水艦基地から、戦略原潜「リューリック」が出航し、東西ドイツ国境ではNATO軍の兵士マイケルが恋をしています。同時に、アメリカによるレーザー砲搭載の有人衛星「スペース・レンジャー」の試験が行われ、順調に進んでいましたが、その直後、計画の主任であるゲイン博士がソ連のスパイに誘拐される事態が発生します。

秘密を守るため、アメリカ政府は博士が乗る潜水艦を攻撃することを決定。この出来事が引き金となり、冷戦の緊張は瞬く間に高まり、ソ連の国防相ブガーリンは開戦を提案します。物語は次第に過激化し、想定以上の混乱と戦争へと発展していきます。

マイケルは愛するマリーネを失ったことで、失意の中、核兵器を用いて戦争に突入。戦火は世界中に広がり、各国が物理的・心理的な圧力に晒されていきます。ブガーリンが権力を掌握する中、彼は過激な選択をし、両国が核ミサイルを発射しあうという最悪の事態へと進展していきます。

メカニックと反対運動

本作に登場するメカニックには、実在の機体や架空の兵器が含まれます。特に「スペース・レンジャー」はアメリカ宇宙防衛軍が開発した有人レーザー戦闘衛星であり、高出力レーザーを装備し、国際的な防衛を担当します。また、宇宙空間での戦闘が描かれるなど、未来的な設定が具体的に表現されています。

作品の制作過程では、反戦思想を持つ市民団体や労働組合からの強い反発がありました。特に、物語のテーマが戦争に関連するため、教育の場において「好戦的な作品」を子どもたちに見せることが懸念されさまざまな運動が展開されました。この運動は、朝日新聞でも取り上げられるなど世間の注目を集めました。

結論

『FUTURE WAR 198X年』は、1980年代の冷戦の不安定な時代を受けて制作された作品であり、戦争の恐怖とその影響をリアルに描写することを目的としました。作り手の意図が社会の反応にどう影響したのか、またアニメを通してどのようにメッセージが伝わるのか、今も考えさせられます。

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