FV433 アボット SPG

FV433 アボット自走砲

FV433アボット（FV433 "Abbot" self propelled gun）は、イギリス陸軍が採用した105mmの自走榴弾砲です。その名は「修道院長」を意味し、歴史的にも興味深い背景を持っています。

開発の背景

第二次世界大戦後、イギリス陸軍は戦中に開発された自走砲を引き続き利用していましたが、1950年代に入ると、これらの兵器の老朽化が顕著になり、性能も時代遅れとなってきました。このため、イギリス政府は新たに現代的な自走砲の開発を決定します。開発は1950年代末に始まり、FV430シリーズ（例えば、FV432装甲兵員輸送車）との共通シャーシを用いることで、コストを抑えつつ短期間での設計を実現しました。1961年には、ロールス・ロイス製のエンジンを搭載した試作車が完成し、最終的にはK.61多燃料エンジンが選ばれました。

車体と構造

FV433の車体設計は、操縦手が前方右側に座り、エンジン室がその左側に配置され、車体後部には戦闘区画があります。この配置は、第二次世界大戦後の自走砲に見られる一般的なものです。また、簡単な整備を可能にするため、共通のパワーパックを使用する点も特筆されます。車体前面には、四つの前照灯が並び、これはこの車両の外見的特長となっています。後期モデルでは、前照灯の数が減らされる傾向にありました。さらに、車体と砲塔は圧延鋼板で構成されており、浮行性スクリーンを展開することで水中での航行も可能です。

兵装

アボットの主砲には105mm榴弾砲L13A1が装備されています。この砲は、最大で17kmの射程を誇り、105mmの榴弾砲としては非常に高い射程を有しています。弾薬は、分離式榴弾、粘着榴弾、発煙弾と多様に使用でき、40発が車体後部に格納されています。また、砲塔上には7.62mm機関銃が装備され、弾薬補給のための大型扉もあります。

生産と運用

アボットの生産は1964年から始まり、数回の改良を経て166両が製造されました。1968年にはエンジンが改良され、浮行性スクリーンは廃止されました。しかし1960年代以降、155mm榴弾砲の需要が高まり、FV433の105mm砲は新たな要求に応えることが難しくなります。これにより運用が制限され、1995年には新型のAS-90に更新されて退役することになりました。

派生型

アボットは、工兵車両として改造された派生型も存在します。この車両は、エンジンをディーゼルエンジンに換装し、様々な工兵機材を装備しています。1968年には20両が生産され、その一部はインド陸軍に供与されています。

登場作品

アボットは映画やテレビドラマにも登場しています。特に、アメリカ軍の車両として扱われることが多いですが、実際に米軍で使用されたことはありません。『SUPER8/スーパーエイト|SUPER8_スーパーエイト』や『クローバーフィールド/HAKAISHA|クローバーフィールド_HAKAISHA』などで、戦車として描かれているシーンが見かけられます。

まとめ

FV433アボットは、その独自の設計と性能から、イギリス陸軍の重要な自走榴弾砲として活躍しました。第二次世界大戦後の技術革新と共に進化したこの兵器は、今もなお多くの人々に注目され続けています。

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