Fastly

Fastly（ファストリー）とは

Fastlyは、アメリカに拠点を置くクラウドコンピューティングサービスプロバイダであり、エッジクラウドプラットフォームを専門としています。同社は、開発者がコアクラウドインフラをネットワークのエッジ、つまりユーザーに近い場所に拡張できるように設計されたプラットフォームを提供しています。これにより、コンテンツ配信の高速化、セキュリティの強化、負荷分散などの機能を提供し、ウェブサイトやアプリケーションのパフォーマンスを最適化します。

主なサービス

Fastlyのエッジクラウドプラットフォームは、以下の主要なサービスを提供しています。

コンテンツデリバリーネットワーク（CDN）: 世界中に分散されたサーバーネットワークを通じて、ウェブコンテンツをユーザーに高速配信します。
画像の最適化: 画像のサイズや形式を自動的に調整し、ウェブページの読み込み速度を向上させます。
ビデオとストリーミング: 動画コンテンツの配信を最適化し、高品質なストリーミング体験を提供します。
クラウドセキュリティ: DDoS攻撃からの保護、ボット対策、Webアプリケーションファイアウォール（WAF）などのセキュリティ機能を提供します。FastlyのWAFは、OWASP ModSecurity Core Rule Setと独自のルールセットを組み合わせて利用しています。
負荷分散: ウェブトラフィックを複数のサーバーに分散させ、可用性とパフォーマンスを向上させます。

Fastlyのプラットフォームは、高性能なキャッシュサーバーであるVarnishを基盤として構築されています。

歴史

Fastlyは2011年3月に、Wikiaの元CTOであるアーサー・バーグマン氏によって設立されました。

2013年6月: シリーズBの資金調達で1000万ドルを調達。
2014年4月: HerokuのCDNアドオンであるCDN Sumoを買収。
2014年9月: シリーズCの資金調達で4000万ドルを調達。
2015年8月: シリーズDの資金調達で7500万ドルを調達。
2015年9月: Googleが、Fastlyや他のCDNプロバイダーと提携し、サービスの提供を開始。
2017年4月: エッジクラウドプラットフォームの提供を開始。同時に、画像最適化、負荷分散、WAFの提供も開始。
2017年4月: 5000万ドルの資金調達。
2018年8月: 4000万ドルの資金調達。
2019年4月: 新規株式公開（IPO）を実施。
2019年5月17日: NYSEに上場。
2020年8月: サイバーセキュリティ企業のSignal Science社を7億7500万ドルで買収。

オペレーション

FastlyのCDNサービスは、リバースプロキシモデルを採用しています。これは、ウェブサイトのトラフィックをすべてFastlyのサーバーを経由させることで、サイト固有のファイル（例：cdn.mydomain.com）を提供する代わりに、ユーザーのアクセスを最適化する仕組みです。

具体的には、ユーザーのリクエストは、世界中に分散された約60箇所のPoint of Presence（PoP）のうち、最もユーザーに近いPoPからコンテンツが配信されます。

料金体系は、月額50ドルの最低料金が設定された従量課金制で、帯域幅は地域に応じた料金で課金されます。コンテンツは、Fastlyのサーバーに直接アップロードされるのではなく、オリジンサーバーやキャッシュサーバーから定期的にプルされるため、エンドユーザーが必要なコンテンツへのアクセス時間を短縮できます。

Fastlyは、HTTP/3|HTTP_3プロトコルに基づくUDP、DRM対応コンテンツ、メディアアクセスを制限するための暗号化やセキュアトークンなどの技術もサポートしています。

不祥事

2021年6月8日、FastlyのCDNサービスで大規模な障害が発生しました。この障害は、午後6時50分頃に発生し、Reddit、gov.uk、Twitch、Spotify、Amazonなどの多数の主要ウェブサイトや、ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、CNN、BBCなどの主要ニュースサイトに影響を与えました。日本国内では、日本経済新聞社、読売新聞社、メルカリ、フィナンシャル・タイムズ（FT）、政府系サイト、楽天グループのウェブサイトなどが一時的に利用できなくなりました。

この障害により、世界中の小売業界に約1500億円の損害が発生したと推定されています。影響を受けた技術系ニュースサイトのThe Vergeは、Googleドキュメントを使って障害の状況をリアルタイムで報告しました。また、Twitterでは絵文字のホスティングサーバーに影響が出たため、絵文字が一時的に使用不能になりました。

Fastlyは、この障害の原因を特定のユーザーの設定によって引き起こされたソフトウェアのバグであると発表しました。

出典

* 公式ウェブサイト

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