Federated Learning of Cohorts

FLoC（Federated Learning of Cohorts）とは

FLoC（Federated Learning of Cohorts、コホート連合学習）は、Googleが提唱する新しいWebトラッキング技術です。従来のサードパーティーCookieに代わるものとして開発され、ユーザーのプライバシー保護と広告効果の両立を目指しています。

FLoCの仕組み

FLoCは、ユーザーのブラウジング履歴に基づいて、興味関心の似たユーザーを「コホート」と呼ばれるグループに分類します。この分類は、ブラウザ内で機械学習アルゴリズムによって行われ、個々のユーザーのデータが外部に送信されることはありません。各コホートには数千人のユーザーが含まれ、週ごとに更新されることで、個人の特定が難しくなっています。

Webサイトは、APIを通じてユーザーが所属するコホートIDにアクセスし、その情報を基に広告配信の最適化を行います。Googleはコホート分類のみを行い、広告主は個別にコホートを分析し、ターゲット広告を配信します。

FLoCのテスト導入

2021年3月、GoogleはサードパーティーCookieの代替として、世界10カ国の一部Chromeユーザーを対象にFLoCのテストを開始しました。このテストは、ユーザーが自動的に参加するものでしたが、サードパーティーCookieを無効にすることでテストを拒否することができました。

ただし、EU圏内では、プライバシー規制への適合性に関する懸念からテストは見送られました。

FLoCに対する様々な反応

肯定的な意見

FLoCの開発者は、全てのWebサイトがユーザーのコホート情報を平等に取得できるため、ユーザー履歴へのアクセスを民主化すると主張しています。また、GoogleはFLoCがサードパーティーCookieと比較して95%の広告効果があると発表していますが、広告業界の一部からは懐疑的な見方も出ています。

否定的な意見

EFF（電子フロンティア財団）

EFFはFLoCを強く批判しており、「存在するべきではない技術のために、ユーザーの信頼を裏切るもの」と評しています。また、ユーザー追跡なしに個人情報を利用可能にする点や、FLoCテスト対象になっているか確認可能なWebサイトを公開しています。

DuckDuckGo

DuckDuckGoは、ユーザーの同意なしに行われる行動追跡に反対し、Chromeユーザーが知らないうちにFLoCを利用される可能性を指摘しています。また、自社プラグインにFLoCをブロックする機能を追加し、FLoCを使用しないことを表明しています。

Brave

Braveは、FLoCを「タイタニックレベルでのデッキチェアシャッフル」と批判し、プライバシーとユーザーに焦点を当てた根本的な変化から後退していると主張しています。BraveブラウザではFLoCを無効にし、アクセスできないようにしています。

The Verge

技術ニュースサイトThe Vergeは、FLoCの広告技術への影響が不透明であるとし、小規模広告企業にとって利益にも損失にもなりうると指摘しています。また、大企業の方がコホートの意味を理解し、適切な広告配信ができる可能性を示唆しています。

フィンガープリントとの関係

一部の専門家は、FLoCが人種や性的指向などのセンシティブな情報を基にしたグループ化を助長する可能性を指摘しています。また、コホート情報がフィンガープリントの強化につながり、プライバシーを損なう可能性についても懸念されています。

MozillaもFLoCを新たなフィンガープリンティング手段として懸念しており、複数回の訪問やコホートの組み合わせを通じて、ユーザーが非公開にしたい情報をウェブサイトが入手できる可能性があると指摘しています。

まとめ

FLoCは、プライバシー保護と広告効果の両立を目指した新しい技術ですが、プライバシー、公平性、競争の観点から多くの懸念が指摘されています。これらの懸念を払拭し、ユーザーにとってより良いWeb環境を実現するためには、技術の透明性を高め、ユーザーの意思を尊重することが重要です。

参考情報

Am I FLoCed? - EFFが提供するFLoC確認ツール
Federated Learning of Cohorts (FLoC) - Googleによる説明
FLoC の概要 - Google Developers Japan
FLoC Origin Trial & Clustering - Chromium Project

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