Frozen Roses

松任谷由実『Frozen Roses』：凍てついた美しさの探求

『Frozen Roses』は、松任谷由実（ユーミン）が1999年11月17日に発表した30枚目のオリジナルアルバムです。東芝EMIからリリースされ、品番はTOCT-24300。1999年12月から2000年7月にかけては、本作をテーマにしたコンサートツアー『FROZEN ROSES』が開催されました。

制作背景とアルバムタイトル

ユーミンは1984年以降、年1作のペースでオリジナルアルバムをリリースしていましたが、1998年にはベストアルバム『Neue Musik』の発売が決定したため、オリジナルアルバムの発売が延期されました。当初、『Neue Musik』のリーフレットには「1999年5月下旬発売予定」と記載されていましたが、その予定もずれ込み、最終的に前作『スユアの波』から約2年ぶりのリリースとなりました。

アルバムタイトル『Frozen Roses』は、プロデューサーである松任谷正隆の意向が反映されたものです。「たとえもろくても冷たくても、切なさを永遠に留めておきたい」という思いが込められています。

サウンドの特徴

サウンド面では、前作が松任谷正隆にとって「完成形」であったため、本作ではエンジニアや機材を大幅に刷新して録音されました。インターネット回線を利用したミックス作業もユーミンの作品として初めて取り入れられ、全体的に豪華なアレンジの楽曲が多いアルバムとなっています。アートディレクターは信藤三雄、ジャケットのイラストは大橋歩が手掛けました。

本作から2006年の『A GIRL IN SUMMER』まで、トム・タッカーがミキサーとして起用されています。また、1999年5月15日に開催された「Internet Home Live vol.1」では、「Rāga#3」「Lost Highway」「流星の夜」がいち早くオンエアされました。

収録曲について

アルバムには、「Now Is On」「恋は死んでしまった」「巻き戻して思い出を」「Rāga#3」「Blue Rain Blue」「Spinning Wheel」「Josephine」「Sweet Surrender」「8月の日時計」「Lost Highway」「流星の夜」の全11曲が収録されています。

特に「Rāga#3」は、アルバム発売前に開催されたYUMING SPECTACLE SHANGRILA 1999のために書き下ろされた楽曲で、インド音楽の要素を取り入れた独特のアレンジが特徴です。プロモーションビデオも制作され、SHANGRILAのキャストが出演しています。

「Spinning Wheel」は、1999年4月から1年間、フジテレビ系全国ネット『めざましテレビ』のテーマソングとして使用されました。アルバム発売の半年以上前から放送されたため、番組には問い合わせが殺到したそうです。

「Lost Highway」は、アルバムの先行シングルとして発売され、シングルのジャケットもアルバム同様に大橋歩がイラストを手掛けています。ユーミンとしては初となる12cmサイズのシングルCDでした。

「流星の夜」は、1998年11月にユーミン夫妻が自宅のベランダから「しし座流星群」を眺めていたことが作詞に影響を与えたとされています。

参加ミュージシャン

本作には、松任谷正隆をはじめ、Alan Pasqua、John Robinson、Russ Kunkel、Harvey Masonなど、国内外の著名なミュージシャンが多数参加しています。ストリングスやブラスセクションも豪華で、楽曲に深みを与えています。

ベストアルバム未収録

意外なことに、本作からは、後に発売されたベストアルバム『sweet, bitter sweet』『SEASONS COLOURS -春夏撰曲集-』『SEASONS COLOURS -秋冬撰曲集-』『日本の恋と、ユーミンと。』『ユーミンからの、恋のうた。』『ユーミン万歳!』には、一曲も選曲されていません。

『Frozen Roses』は、ユーミンの音楽的な実験精神と、時代を捉える感性が融合した、聴きごたえのあるアルバムです。豪華なサウンドと、切ない歌詞が織りなす世界観は、多くのファンを魅了し続けています。

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