FutureBASIC

FutureBASICは、かつてMacintosh上で利用されていた、BASIC言語を基盤とする統合開発環境です。従来のBASICがしばしばインタプリタ方式で実行されたのに対し、FutureBASICはプログラムをコンパイルし、PowerPCやIntel 64といったMacintoshの主要なCPUアーキテクチャ向けの高速なネイティブコードを生成できる点が最大の特徴でした。これにより、より高いパフォーマンスが求められるアプリケーションの開発も現実的なものとなりました。

この開発環境は、単にコードを書くだけでなく、コンパイル、デバッグといった開発に必要な一連の作業を効率的に行えるように設計されていました。

言語仕様においては、標準的なFullBASICに近い構文を採用しており、BASIC経験者にとって比較的学習しやすいものでした。また、当時の他の主要なBASIC処理系、例えばZBASIC、NECのN88-BASIC、MicrosoftのQuick BASICなどとの互換性も考慮されていたため、既存のコード資産を活用しやすい側面もありました。さらに、従来の多くのBASICでは扱えなかったポインタの概念が導入されていたことも特筆されます。これにより、メモリをより低レベルで操作するなど、高度なプログラミング技術も利用可能でした。

コンパイラ方式であることの大きな利点は、開発したプログラムが外部のランタイムライブラリに依存しない、単独で実行可能なアプリケーションとして出力される点にありました。これは、ソフトウェアをエンドユーザーに配布する際のハードルを大きく下げ、手軽にアプリケーションを利用してもらえるようにしました。

Macintoshのオペレーティングシステムとの連携もFutureBASICの重要な能力の一つでした。Macintosh Toolboxや、その後に登場したCarbonといったMac OSの基幹となるフレームワークにアクセスするための機能が提供されており、これによりMac OS標準のウィンドウやメニューを持つ、ネイティブなGUIアプリケーションを開発することが可能でした。また、Macintoshが特徴的に利用していたリソースフォークを扱う機能も充実しており、アプリケーションのGUI要素や各種設定などをコード本体から分離して管理することが容易でした。

単なる標準的なアプリケーションだけでなく、FutureBASICはMac OSの機能拡張書類、さまざまなアプリケーション用のプラグイン、あるいはHyperCardの拡張機能として使われたXCMDなど、いわゆるコードリソースと呼ばれる特殊な種類のプログラムをコンパイルする能力も備えていました。これにより、システムの一部をカスタマイズしたり、他のソフトウェアの機能を拡張したりするような、より高度な開発にも利用することができました。

かつてはカッパラボによって日本語版の開発と販売が行われていましたが、現在はその活動は終了し、製品の発売も中止されています。

FutureBASICは、その高速性、コンパイラとしての能力、そしてMac OSとの強力な連携により、当時のMacintoshユーザーにとって、BASIC言語でありながら本格的なアプリケーション開発を可能にした、ユニークでパワフルな開発環境でした。

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