HyperCard

HyperCard：ハイパーテキストの先駆けとなった革新的なソフトウェア

HyperCardは、1987年にApple Computer（現:Apple）のビル・アトキンソンによって開発された、ハイパーテキストの概念を具現化した初期の商用ソフトウェアです。Macintosh (Classic Mac OS) 上で動作し、ゲーム制作から簡単なプログラム開発まで、幅広い用途で利用されました。

概要

HyperCardの最大の特徴は、情報を「カード」と呼ばれる単位で管理し、カード同士を「ボタン」で繋ぐという、直感的で分かりやすいインターフェースです。カード上にはテキストやグラフィックを自由に配置でき、ボタンを押すことで、別のカードへ移動したり、HyperTalkと呼ばれる独自のスクリプト言語で記述されたプログラムを実行したりすることが可能です。

このシンプルな構造により、プログラミングの知識がないユーザーでも、容易にマルチメディアコンテンツを作成することができました。実際、アドベンチャーゲーム『MYST』の初期バージョンや、ベートーベンの交響曲第9番CD-ROM、全地球カタログの初期バージョンなど、多様な作品がHyperCardで制作されました。

歴史

初期のバージョン1.xでは、Macintoshに標準添付され、オーサリング機能を含む全ての機能が無償で提供されていました。しかし、バージョン2.0以降は、オーサリング機能が利用できるHyperCardは有償となり、ファイル実行機能のみのHyperCard Liteが無償配布される形に変更されました。ただし、HyperCard Liteもコマンド「magic」を使用することでオーサリングが可能でした。

その後、HyperCard Playerが登場し、オーサリング機能は完全に削除されました。最終バージョンは2.4.1であり、2007年時点でも日本のAppleのサイトからHyperCard Lite 2.2-J、Player J1-2.3がダウンロード可能でした。

バージョン3.0の開発も進められていましたが、最終的に中止となり、QuickTimeはHyperCardの統合で実装が予定されていた機能の代わりにFlashファイルをサポートすることになりました。2000年にはHyperCardチームが解体され、Appleが今後HyperCardに関するアクションを起こす可能性は低いと見られています。

評価と影響

HyperCardは、その革新的なコンセプトと使いやすさから、多くの賞賛を受けました。「HyperCardは、人々がパーソナルコンピュータとしてMacintoshを選択するきっかけになるかもしれない」「将来のほとんどのMacintoshのソフトウェアはHyperCardを用いて開発されるだろう」といった評価もありました。スティーブ・ウォズニアックは、HyperCardを「これまでで最高のプログラム」と称賛しています。

HyperCardは、ソフトウェア開発の世界に大きな影響を与え、多くの類似ソフトウェアやツールが開発されました。また、HyperCardで制作されたファイルを「スタック」と呼ぶ文化や、HyperCardに実装されていない機能を実現するためのXCMDやXFCNといったシステムも生まれました。

ウェブブラウザのフィンガーカーソルも、HyperCardに由来するとされています。HyperCardは、Macintosh文化の一翼を担い、その後のソフトウェア開発に多大な影響を与えた、重要な存在と言えるでしょう。

HyperCardに影響されて開発されたオーサリングツールや類似するもの

SuperCard
Serf
TownsGEAR
UserLand Frontier
Oracle Media Objects
LINGO
PythonCard
LiveCode
Microsoft PowerPoint
ViolaWWW
アドベンチャーツクール
WinPlus
HyperSense
HyperNext
TileStack
mTropolis
* NoteCards

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