GDDR5

GDDR5とは

GDDR5（Graphics Double Data Rate 5）は、AMDによって開発されたビデオカード用メモリ技術です。業界標準化団体であるJEDECとAMDのエンジニアが協力して規格を策定しました。GDDR3やGDDR4の後継として位置づけられ、グラフィックス処理におけるデータ転送速度の向上と効率化を追求しています。

技術概要

GDDR5は、エルピーダメモリ、サムスン、ハイニックス半導体といった主要な半導体メーカーによって量産されています。グラフィックスチップ（GPU）とメモリ間のデータ転送速度は、メモリインターフェースの幅やダイサイズに依存しますが、GDDR5ではデータ転送技術の改良により、理論上最大28Gbpsの転送速度を実現しています。

これは、DDR2の約9倍、GDDR3の約5倍、GDDR4の約4倍という、大幅なデータ転送速度の向上を意味します。この高速化により、メモリインターフェースやメモリバス幅を削減しても、高いデータ帯域幅を維持できます。その結果、データ転送の高速化だけでなく、チップの小型化、省電力化、低発熱化も実現しました。さらに、電圧制御機能の最適化により、稼働時の消費電力を抑えることにも成功しています。

また、GDDR5には新しいエラー検出メカニズムが搭載されており、エラーを特定してコマンドを再発行し、有効なデータを取得する機能があります。これにより、HPC（ハイパフォーマンスコンピューティング）、金融、研究分野においても、高い処理性能と信頼性を確保できます。

採用事例

GDDR5メモリチップは、AMDが2008年6月25日に発売したRadeon R700シリーズのRadeon HD 4870で初めて採用されました。その後、Radeon HD 4890、HD 4770、Evergreen世代からVolcanic Islands世代全般、ワークステーション向けのATI FireProシリーズなど、幅広い製品に採用されています。

一方、NVIDIAはGeForce GT 240からGDDR5を採用し始め、GeForce 300シリーズから900シリーズにおいてもGDDR5が利用されています。PlayStation 4|PlayStation_4では、メインメモリとしてGDDR5が採用され、8GBの容量と176GB/sの帯域幅を実現しています。

後継規格

GDDR5の後継規格としては、HBM（High Bandwidth Memory）やGDDR5Xが存在します。これらの規格は、さらなる高速化や高帯域幅を追求しており、より高度なグラフィックス処理を可能にしています。

開発経緯

GDDR5の開発と量産化に至るまでには、いくつかの重要な出来事がありました。

• - 2007年3月26日: キマンダがGDDR4をスキップし、GDDR5メモリの量産に向けた開発を開始すると発表。
• - 2007年4月16日: キマンダとアドバンテストが共同でGDDR5のテストソリューション開発を発表。
• - 2007年11月1日: キマンダが転送速度4GbpsのGDDR5メモリチップのサンプル出荷を開始。
• - 2007年12月2日: サムスンが転送速度6GbpsのGDDR5メモリチップの開発を発表。
• - 2008年5月21日: AMDとキマンダがGDDR5メモリチップ量産における提携を発表。
• - 2008年11月23日: ハイニックスが転送速度7GbpsのGDDR5メモリチップを開発し、54nmプロセスでの量産を開始。
• - 2009年2月12日: サムスンが転送速度6GbpsのGDDR5メモリチップを50nm級プロセスで量産開始。ゲーム機などへの搭載が予定された。
• - 2009年8月6日: エルピーダメモリがキマンダからGDDR3、GDDR5に関する技術と開発チームを譲渡されたと発表。2010年上期に台湾、下期に広島工場でGDDR5の量産を開始する計画が示された。
• - 2009年11月20日: エルピーダメモリがキマンダから譲渡された技術を基に、6GbpsのGDDR5メモリチップの開発を完了。ミュンヘンデザインセンターで最終稼働試験を行い、2009年12月にサンプル出荷、2010年第2四半期から量産を開始すると発表。
• - 2010年6月24日: エルピーダメモリが同社初の2Gbit GDDR5メモリ「EDW2032BABG」を開発。50nmプロセスと銅配線技術により、従来の1Gbit品と比較して2倍の容量、最高7Gbpsの転送速度、低消費電力を実現。

まとめ

GDDR5は、グラフィックス処理の高速化と効率化に大きく貢献したメモリ技術です。その開発と進化は、グラフィックカードだけでなく、ゲーム機や高性能コンピューティング分野にも大きな影響を与えています。後継規格の登場により、その役割は変わりつつありますが、GDDR5はメモリ技術の歴史において重要なマイルストーンと言えるでしょう。

関連情報

• - GDDR6
• - 集積回路
• - 半導体産業
• - Random Access Memory
• - コンピュータグラフィックス

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