ビデオカード

ビデオカード：パソコンの映像を司る心臓部

ビデオカードは、パソコンに映像を出力したり、入力したりする機能を担う拡張カードです。ビデオボード、グラフィックカード、グラフィックボードなど、様々な呼び名がありますが、本稿では「ビデオカード」に統一します。

ビデオカードの役割と進化

初期のパソコンでは、映像表示機能はマザーボードに内蔵されていませんでした。そのため、ビデオカードは映像出力に必須の部品でした。交換や増設が容易なため、性能向上や機能追加に柔軟に対応できました。しかし、マザーボードにグラフィック機能が統合されたチップセットや、CPUにGPUが内蔵されるようになったことで、低価格帯のパソコンではビデオカードが不要になりました。

現在では、高精細な3D表示やマルチディスプレイ環境、高度な画像処理などを実現するために、ビデオカードは主にゲーミングPCやクリエイター向けPCに追加されることが多いです。また、CPU内蔵GPUよりも高性能なdGPU（独立型GPU）として、システム全体の性能向上にも貢献します。

2004年からはUSB接続のビデオカードも登場しました。これは、USBバスの帯域幅の制限を圧縮技術で克服することで、複数のディスプレイへの出力などを可能にしています。ただし、CPUへの負荷が高くなることや、OS起動後にしか使用できないなどの制限があります。

ビデオカードの構成要素

ビデオカードは、主に以下の要素で構成されています。

1. ビデオメモリ (VRAM)

描画情報を一時的に保存するメモリです。容量が大きいほど、高解像度や高画質の表示が可能になります。高速な専用メモリが使われることが多く、近年は数GBから数十GBの大容量メモリを搭載する製品も増えています。かつては増設可能でしたが、現在は固定容量が一般的です。

使用されてきたRAMの種類には、EDO DRAM、Window DRAM、SDRAM、SGRAM、DDR SDRAM、DDR2 SDRAM、DDR3 SDRAM、DDR SGRAM (GDDR)、GDDR2、GDDR3、GDDR4、GDDR5、GDDR5X、GDDR6、GDDR6X、HBMなどがあります。

2. Unified Memory Architecture (UMA)

UMAは、独立したビデオメモリを持たず、メインメモリをCPUと共有する方式です。省スペースで低コストですが、メインメモリと帯域幅を共有するため、システム全体の性能低下を招く可能性があります。モバイル機器などで多く採用されています。

3. 内部インターフェイス

ビデオカードとマザーボードを接続するインターフェイスです。PCI、PCI Express、Thunderboltなどが主な規格です。古い規格としては、AGP、ISA、MCA、EISA、VLバスなどがあります。

4. 外部インターフェイス

ビデオカードの出力をディスプレイなどに接続するためのインターフェイスです。DVI、HDMI、DisplayPortなどが一般的です。

5. ビデオBIOS

ビデオカードに搭載されているBIOSで、システム起動時の初期表示などを制御します。

6. 冷却機構

ビデオカードは消費電力と発熱が大きいため、冷却機構が重要です。大型ファンやヒートシンクを搭載した製品が多く、高性能なビデオカードほど冷却装置が大型化・重量化します。

7. 補助電源

高性能なビデオカードでは、PCIeスロットからの電力供給だけでは不足するため、補助電源コネクタから追加で電力を供給する必要があります。

ビデオカードの歴史

IBM PC以降のパソコンでは、ビデオカードは拡張カードとして独立して設計されてきました。当初はテキスト表示のみのMDAや、グラフィック表示可能なCGAが提供されていました。その後、EGA、VGA、SVGA、XGAといった規格が順次登場し、解像度や色数は飛躍的に向上しました。

各社が独自に上位互換のビデオカードを開発したため、規格の統一は難航しました。VESAがVBE（Video BIOS Extensions）を標準化することで、画面モードの互換性確保に貢献しました。

日本市場では、PC-9801シリーズなどの独自規格が長く使用されていましたが、DOS/V|DOS_VやWindowsの普及に伴い、PC/AT互換機|PC_AT互換機とビデオカードが主流になりました。

ビデオカードのメリットとデメリット

メリット:

描画性能の向上とスケーラビリティ
システム性能の向上
マルチモニター機能への対応
保守性の向上
CPUの負荷軽減

デメリット:

消費電力の増加
占有スペースの増加
排熱の増加
接続部位の増加による信頼性の低下
隣接スロットへの圧迫

ビデオカードメーカーとGPU

ビデオカードの主要メーカーは、ASUSTeK Computer、GIGABYTE、MSIなどです。GPUは、NVIDIA、AMD、Intelの3社が市場をほぼ独占しています。コンシューマー向けにはGeForce、Radeon、Arcシリーズが、プロフェッショナル向けにはQuadro、FirePro、Arc Proシリーズが提供されています。サーバー向けには、NVIDIA TeslaやAMD FirePro Sシリーズなどが使われています。

その他

ノートパソコンでは、ビデオカードの増設は一般的に不可能です。一部、外付けGPU接続技術も登場していますが、普及は進んでいません。オンボードグラフィックスはマザーボードに統合されたグラフィックス機能で、低価格帯のパソコンで多く採用されていますが、高負荷な作業には向いていません。

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