GNU Scientific Library

GNU Scientific Library (GSL) について

GNU Scientific Library (GSL) は、C言語で記述された科学技術計算ライブラリであり、数値計算、統計解析、線形代数、特殊関数など、幅広い分野における高度な計算機能を備えています。オープンソースソフトウェアとして、GNU General Public License のもとで配布されており、自由に利用・改変が可能です。

GSL の歴史

GSL プロジェクトは、1996年にロスアラモス国立研究所の Dr. M. Galassi と Dr. J. Theiler によって着想されました。その後、計算物理の専門家集団を中心に開発が進められ、現在に至っています。開発チームは、GSL が GNU プロジェクトの一部であることを明確に示しており、コードは全て自由に使用できることを保証しています。

GSL の特徴

幅広い機能: GSL は、複素数演算、多項式の求根、特殊関数、ベクトル・行列演算、線形代数、固有値問題、高速フーリエ変換、数値積分、乱数生成、統計計算、微分方程式、補間など、多岐にわたる科学技術計算機能を網羅しています。
BLAS サポート: 線形計算においては、BLAS (Basic Linear Algebra Subprograms) をサポートしており、CBLAS インターフェースを実装しています。
C 言語ベース: GSL は C 言語で記述されているため、C++ からも利用できますが、C++ のクラスではなく、C 言語の構造体で実装されています。
豊富なドキュメント: GSL のリファレンスマニュアルは、日本語訳も提供されており、サンプルコードも多数収録されています。
活発な開発コミュニティ: メーリングリストでは、活発な議論が行われており、年に1〜2回のメンテナンスリリースでバグ修正が行われています。
多様な言語バインディング: C言語だけでなく、Java、Perl、Python、Rubyなど、他の様々な言語からもGSLの機能を利用するためのバインディングが提供されています。

GSL の利用

GSL は、Linux をはじめとする Unix 系 OS で利用できます。また、Microsoft Visual Studio 用のバイナリも提供されています。GSL を利用するためには、ヘッダファイルをインクルードし、関数を呼び出す必要があります。C++ から利用する場合、ラッパーを利用することも可能ですが、必ずしも必須ではありません。また、複素数型などの演算は専用の関数を用いる必要があります。しかし、C11 に対応するコンパイラを使用する場合、gsl_complex型をC11標準の複素数型と同様に扱えるようになりました。

GSL の開発状況

GSL の開発チームは、GSL が GNU プロジェクトの一部であり、コードが全て自由に使用できることを保証しています。プロプライエタリなコードとは対立した開発姿勢をとっています。現在、年に1〜2回のメンテナンスリリースでバグ修正が行われています。また、C++ 対応などの議論も活発に行われていますが、具体的なスケジュールは未定です。

他の言語との連携

GSL は、C言語ライブラリとして提供されていますが、他の様々な言語からも利用可能です。以下に主な言語バインディングを示します。

Java
Perl
Perl Data Language
Common LISP
Python
Ruby
GNU R
OCaml

GSL が提供する機能

GSL は、以下のような幅広い機能を提供しています。

複素数演算
多項式の求根
特殊関数
ベクトル・行列演算
置換・組み合わせ
整列
線形代数
固有値問題
高速フーリエ変換
数値積分
乱数生成
統計計算
ヒストグラム
モンテカルロ積分
微分方程式
補間
数値微分
チェビシェフ近似
数列収束の加速
方程式の求根
非線形最小化
最小二乗フィッティング
物理定数
離散ウェーブレット変換
B-スプライン曲線
疎行列とその線形代数

GSL の活用例

GSL は、科学技術計算における様々な場面で活用されています。例えば、物理シミュレーション、データ解析、画像処理、機械学習など、幅広い分野で利用されています。以下に簡単なベッセル関数の値を計算する C プログラムの例を示します。

c

include

include

int main (void)
{
double x = 5.0;
double y = gsl_sf_bessel_J0 (x);
printf ("J0(%f) = %.18e
", x, y);
return 0;
}


コンパイルは以下のように行います。

bash
gcc $(gsl-config cflags) example.c $(gsl-config libs)


実行結果は以下のようになります。


J0(5.000000) = -1.775967713143382920e-01

関連情報

GSL は、数値解析、アルゴリズム、計算科学、シミュレーション、数値解析ソフトウェアなどの分野と関連があります。また、FFTW、ATLAS、GLPK、NLoptなどの他の数値計算ライブラリとも比較されます。

まとめ

GNU Scientific Library (GSL) は、科学技術計算のための強力なツールであり、オープンソースとして自由に利用できます。幅広い機能と活発な開発コミュニティを持ち、様々な分野で活用されています。数値計算を行う際には、GSL を利用することを検討すると良いでしょう。

もう一度検索