GONIN

男たちの挽歌『GONIN』：社会の落し子たちの抗争と、その波乱の製作秘話

1995年、石井隆監督によって世に放たれたバイオレンス・アクション映画『GONIN』（ゴニン）は、公開当時から大きな話題を呼びました。メジャー配給作品としては石井監督初挑戦であり、当初は夏期の公開を予定していましたが、内容の重さから秋への延期が決定。公開予定だった別の映画が繰り上げ公開されるなど、公開前から波乱含みのスタートとなりました。さらに、当初R-15指定だったものの、再編集により一般作品へと変更されています。

製作：竹中直人の発案から始まった、豪華キャストと波乱の展開

本作の製作は、俳優の竹中直人の発案から始まりました。石井監督の初期作品で主演を務めた竹中は、長年の交流の中で監督に「レザボア・ドッグスのような男だらけの作品」を提案。この提案に石井監督が賛同し、竹中の所属事務所がスポンサー集めや製作体制構築に奔走することで、豪華なキャスト陣と松竹配給での公開という快挙が実現しました。

劇場公開時は興行収入が振るいませんでしたが、ビデオ化されると状況は一変。レンタルビデオ店の人気ランキングで常に上位にランクインする大ヒット作品となりました。この人気を受けて、女性版である『GONIN2』の製作も決定し、シリーズ化が計画されました。しかし、松竹における作品の責任者であった奥山和由氏の解任をきっかけに、全てのプロジェクトが白紙撤回。松竹内部では“奥山プロデュース作品”というレッテルが貼られ、事実上封印作品と化してしまいます。

それでも、本作は高い評価を受け続け、長年に渡り支持されてきました。そして、石井監督作品を多く手掛けてきたKADOKAWAが動き出し、松竹との交渉を経て、奥山氏や松竹との関係を完全に断ち切った完全新作として、続編『GONIN サーガ』が2015年に公開されることとなります。

あらすじ：社会の底辺に生きる5人の男たちの、壮絶な抗争

借金を抱えたディスコオーナー、元刑事、リストラされたサラリーマン、元ボクサー、そして男娼──社会から見放された5人の男たちは、大胆にも暴力団事務所への強盗を計画し、実行します。しかし、彼らの犯行はすぐに発覚。暴力団は二人の凄腕ヒットマンを雇い、激しい報復を開始します。

5人の男たちは次々と命を落としていきます。激しい銃撃戦、裏切りの連鎖、そして予測不能な展開が、観る者の心を掴んで離しません。生き残った男は、復讐の鬼と化し、暴力団事務所へ乗り込みますが、その結末もまた悲劇的なものとなるのです。

登場人物：個性豊かなキャスト陣

本作には、佐藤浩市、本木雅弘、根津甚八、竹中直人、椎名桔平ら、実力派俳優たちが集結。それぞれが、社会の底辺で生きる男たちの複雑な心情を、見事に表現しています。

特に、ビートたけし演じる冷酷な殺し屋は、作品全体に漂う陰惨な雰囲気をさらに濃密なものにしています。彼ら個性豊かなキャラクターたちの生き様、そして、抗争の結末は、観る者に強い衝撃を与え、忘れられない作品として記憶に残ることでしょう。

メディア展開：VHS、LD、DVD、ブルーレイと、様々なメディアで展開

『GONIN』は、VHS、LD、DVD、ブルーレイと、様々なメディアで発売されています。特に、DVDには「GONIN REAL EDITION」として、追加・変更シーンを加えた特別版が収録され、劇場公開版とは異なる映像体験を提供しています。また、豪華ブックレットや石井隆監督描き下ろしイラストBOXが付属するコンプリートボックスも発売されました。さらに、サウンドトラックや挿入歌も発売され、作品の世界観をより深く楽しむことができます。

そして、2015年の続編『GONIN サーガ』へ

『GONIN』の高い評価を受け、2015年には続編『GONIN サーガ』が公開されました。本作では、前作の登場人物の子どもたちが主人公となり、新たな物語が展開します。前作からの伏線回収や、新たな登場人物たちの活躍など、見どころ満載の作品となっています。

『GONIN』は、社会の闇と人間の業を描きながらも、人間の強さや生への執着を鮮やかに表現した、忘れられない傑作です。

もう一度検索