Giga-IR

Giga-IR（ギガ アイアール）は、赤外線LEDを利用した高速近距離光通信の規格であり、最大1Gbit/sのデータ伝送速度を実現します。この規格は、KDDI、KDDI研究所、ローム、イーグローバレッジが共同で開発を進め、赤外線通信の標準化団体であるIrDA（Infrared Data Association）内にワーキンググループが設立され、規格Version 1.0が公開されました。Giga-IRは、EFIR (Extremely Fast Infrared communication) とも呼ばれています。

技術的な特徴

高速データ伝送: 最大データ伝送速度は1Gbit/秒を誇ります。これにより、大容量のデータも短時間で転送することが可能です。
光源と受光: 光源には赤外線レーザー素子と赤外線LEDが使用され、受光には主にフォトダイオードが用いられます。
波長: 使用される波長は880nmです。
信号処理: 送信発光時にはプリエンファシスと呼ばれる処理が行われ、信号の品質を向上させています。また、8B10B符号化と4値ASK変調が用いられ、効率的なデータ伝送を実現しています。

主な用途

Giga-IRの主な用途としては、以下のものが挙げられます。

デジタル家電間のデータ伝送: デジタルカメラやムービーからテレビやHDDレコーダーへ、画像や動画データなどの大容量ファイルを高速に伝送できます。これにより、家庭内でのメディア共有がよりスムーズになります。
USB機器の無線化: Giga-IRはUSB機器のケーブルレス化に貢献します。特に、物理層にGiga-IR Version 1.0を利用し、その上にUSB規格のプロトコル層を実装することで、USB 2.0をエミュレートする"IrUSB"規格が策定されました。この規格により、USB機器を無線で利用することが可能になります。

利用環境

通信距離: 最も安定した通信を行うことができるのは、約5cm程度の距離です。この範囲であれば、上下左右10°以内の角度で確実に通信が可能です。
互換性: Giga-IRは、既存の赤外線通信規格であるIrDAやIrSimpleなどとの下位互換性も比較的容易に持たせることが可能です。これにより、既存のインフラストラクチャを活用しつつ、高速通信を実現できます。
データ転送速度: 例えば、100MB程度のデータファイルであれば、およそ1.0～1.5秒で送ることが可能です。これにより、容量の大きいマルチメディアファイルも数秒間でやり取りできます。

今後の展望

KDDIでは、携帯電話やスマートフォンなどの端末間でのデータ転送だけでなく、デジタル家電やPC、プリンターなどの周辺機器との連携も視野に入れています。さらに将来的には、この高速性を活かして、自動販売機のように店頭に高速赤外線用モジュールを設置し、動画コンテンツなどの販売にも応用することが期待されています。

安全性について

Giga-IRは近接通信を前提としていますが、従来よりも長波長（0.8μm→1.3μm）で、低い出力でレーザー素子を動作させることで、安全性を確保しています。これにより、人体への影響を最小限に抑えることが可能です。

参考資料

KDDI研究所, 携帯電話を用いた伝送速度1Gbit/s赤外線ワイヤレス通信の実現, 2008年1月8日

外部リンク

* ITmedia +Dモバイル, 「CEATEC JAPAN 2008・100MBのデータも約1秒で転送――KDDI、1Gbit/s高速赤外線通信技術を公開」, 2008年9月30日

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