IrDA

IrDA：赤外線通信規格の解説

IrDA（Infrared Data Association）は、赤外線を利用した近距離無線データ通信の規格を定める団体、そしてその規格自体の名称です。特に規格そのものはIrDA DATAと呼ばれています。IrDA規格は、あらゆる赤外線通信を網羅するものではなく、主に情報機器間の通信に焦点を当てています。パソコンではUSBやRS-232Cポート経由で接続する方式が一般的で、OS上でも同様の認識です。

学習リモコンへの応用

家電製品のリモコン等に使われる赤外線通信は、IrDAとは異なる独自仕様です。しかし、IrDA対応機器でこれらのリモコン信号を観測すると、一定のパターンとして認識できます。この特性を利用し、携帯端末やノートパソコンを学習リモコンとして機能させるソフトウェアも存在します。専用リモコンと比べて反応速度は劣りますが、複数のリモコンを一元化できます。ただし、携帯電話のリモコンアプリでは受信信号パターンの取得ができないため、学習リモコンアプリの作成は不可能です。

IrDAの採用と普及

IrDA規格は当初、ノートパソコンなど一部機器への限定的な搭載にとどまりました。通信距離が約30cm～1mと短く、汎用性に欠ける点が普及の阻害要因でした。しかし、NTTドコモの携帯電話への標準搭載を皮切りに、auやSoftBank（旧ボーダフォン）でも採用され、IrDAを用いたサービスが拡大しました。

1990年代後半に流行したPDAでは、手軽なメモ入力とノートパソコンとのデータ同期にIrDAが活用されました。また、PDA間でのアドレス帳データ交換機能も搭載された機種もありました。近年の携帯電話やPDAでは、カメラで撮影した写真のノートパソコンへの転送にもIrDAが使用されました。データサイズの大型化に伴い、高速化が求められ、4Mbps版や高速プロトコルIrSimpleの登場で伝送速度は大幅に向上しました(IrSimpleでは約400kB/s)。特に、撮影直後の写真印刷において利便性が高く、普及が期待されています。さらに、次世代規格のUFIR(Ultra Fast IR)の開発も進み、将来は100Mbpsまで高速化される可能性があります。
パソコン利用面では、ICカード公衆電話へのIrDAポート搭載により、外出先でのネットワーク接続が実現していました。しかし、携帯電話の普及による公衆電話利用者の減少、そしてPDAが携帯電話に取って代わられたことから、IrDA搭載のICカード公衆電話は2006年に廃止されました。

IrDA規格一覧

IrDA規格には、ハードウェア規格であるIrPHY(Infrared Physical Signaling Layer)や、ソフトウェア規格であるIrLAP(Infrared Link Access Protocol)、IrLMP(Infrared Link Management Protocol)、IrTTP(Infrared Tiny Transport Protocol)などがあります。IrPHYは1.0から1.4まで存在し、通信速度や距離が異なります。通信距離0.3mのローパワーオプションは、小型機器向けに消費電力を抑えた規格です。通信速度や変調方式、フレーム構成は規格によって異なります。例えば、SIRは2.4kbps～115.2kbps、MIRは0.576Mbps～1.152Mbps、FIRは4Mbps、VFIRは16Mbps、UFIRは100Mbpsの通信速度を実現します。また、通信距離は標準電力(SP)、低電力(LP)の組み合わせで異なり、通信角度も±15～30度です。

IrDAの歴史と現状

IrDA規格は1993年、Hewlett-Packard、IBM、Microsoft、Sharpなどの企業主導で策定されました。1990年代には、ノートパソコン、デスクトップパソコン、PDA、プリンターなどに搭載されました。Bluetoothの登場以降はBluetoothへの移行も進みましたが、Bluetoothの互換性問題や初期接続の複雑さから、IrDAは携帯電話間での情報交換など、特定の用途で使い続けられています。現在では、携帯電話の赤外線機能はメールアドレスや電話番号交換などに利用されています。小型化が進んだIrDAモジュールは携帯型ゲーム機にも搭載され、近距離一対一通信の容易さから、2000年代以降も電子ゲームなど一部機器で継続して利用されています。

関連項目

IrSimple
IrFM
Palm (PDA)
Windows CE
PSP（1000番台）（IrDA搭載）
光無線通信
Giga-IR
Personal Area Network
Apple Remote
Infrared Data Association

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