GRAS

GRAS（グラス）とは

GRAS（Generally Recognized As Safe）は、アメリカ食品医薬品局（FDA）が食品添加物に対して与える安全基準合格証であり、「一般に安全と認められる」という意味を持つ頭字語です。この制度は、1958年の食品添加物規制法の大幅な改正によって導入されたポジティブリスト制度の一環として設けられました。

GRASリストに収載される物質は、毒性データの有無に関わらず、長年の食経験や科学的な知見などに基づいて総合的に評価されます。その結果、食品添加物として使用する上で際立ったリスクがないと判断された物質がリストに加えられます。リストに記載されていない添加物は原則として使用が禁じられます。

GRASの評価プロセス

GRAS物質として認定された後も、FDAによる再評価が行われます。再評価によっても安全性が確認された場合、その物質は「GRAS確認済み物質」というステータスを得ます。しかし、再評価の結果、物質の使用が禁止されることもあります。例えば、人工甘味料であるサイクラミン酸は当初GRAS物質でしたが、動物実験で発がん性が確認されたため、1969年に使用が禁止されました。

動物実験などで得られた毒性評価の結果、GRASと認められなかった物質は、通常の食品添加物リストに移されます。当初、GRAS物質の認定は専門家による評価のみで行われ、政府（FDA）の承認は必須ではありませんでした。しかし、1997年からはFDAに評価の手順を届け出て、その手順に従って適切に評価が行われたかを確認する制度となっています。

FEMA GRAS

アメリカの食品用香料業界団体であるFlavor and Extract Manufacturers Association（FEMA）は、1965年から専門家パネル（FEXPAN）を設立し、フレーバーに関するGRAS物質リストを独自に審査しています。このリストはFEMA GRASと呼ばれ、多くの国で規制基準として採用されています。

FEMA GRASの審査には、デシジョンツリーと呼ばれる意思決定支援ツールが用いられています。

他国への影響

GRAS制度は、他国の食品添加物規制にも影響を与えています。例えば、日本の既存添加物リストの制定はGRASと類似した経緯をたどっています。また、2002年より日本で食品添加物規制の国際化が開始された際には、FEMA GRASが一部採用され、食塩へのフェロシアン化物の使用が認可されました。

さらに、国際的な食品添加物専門家合同委員会（JECFA）の安全性評価においても、FEMA GRASの審査法が採用されており、事実上の標準となっています。

まとめ

GRASは、食品添加物の安全性を評価するための重要な制度であり、アメリカだけでなく世界各国の食品規制に影響を与えています。この制度があることで、私たちは食品添加物の安全性を一定程度担保することができていると言えるでしょう。また、GRASの評価方法は常に最新の科学的知見に基づいて更新されており、その安全性は継続的に検証されています。

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