H・H・ホームズ

H.H.ホームズ：アメリカ最初の連続殺人犯

H.H.ホームズ（本名：ハーマン・ウェブスター・マジェット）は、19世紀後半にアメリカで活動した初期の連続殺人犯の一人として知られています。彼の生涯は、数々の詐欺や重婚、そして残忍な殺人を伴い、今なお多くの謎に包まれています。

生い立ちと初期の生活

1861年、ニューハンプシャー州で生まれたホームズは、幼少期から動物虐待の兆候を見せていたと伝えられています。しかし、当時の証言からは確証は得られていません。彼は16歳で高校を卒業後、教鞭を執りました。1878年には結婚し、息子をもうけていますが、その後、大学に進学するも中退、医学部に再入学し卒業しました。

医学部在学中、解剖学教室で働いていたホームズは、遺体を不正に入手していた疑いがあり、後に保険金詐欺のために大学の遺体を使用したことを認めています。彼は複数の女性との関係を持ち、その中には暴力を振るったとされる証言も残っています。

その後、ホームズはニューヨーク、フィラデルフィアへと移り住みましたが、各地で不審な出来事が起こり、彼が関与した可能性が指摘されています。これらの出来事から逃れるように、彼はシカゴへ移住し、ヘンリー・ハワード・ホームズと名乗るようになりました。

シカゴでの活動と「殺人の城」

1886年、ホームズはシカゴに到着し、薬局を購入しました。その後、薬局の向かいの土地を購入し、複合ビルを建設し始めます。このビルは、後の世に「殺人の城」と呼ばれるようになります。

建設中、ホームズは業者への支払いを拒否し、訴訟に発展しました。1893年のシカゴ万国博覧会に合わせてホテルとして利用する予定でしたが、ホテル部分は完成しませんでした。彼は隠し部屋や迷路のような廊下を持つこの建物を、多くの殺人の舞台にしたと伝えられています。

しかし、これらの証拠は曖昧であり、事実と異なるフィクションも多く含まれていると考えられています。実際に、彼がオーナーだったとされる薬局の以前の持ち主夫妻は、ホームズがシカゴに到着後も存命していたことが記録に残っており、ホームズが彼らを殺害したという噂は事実無根であるとされています。

ホームズは、愛人であったジュリア・スミスとその娘パール、また別の愛人エメリン・シグランドを殺害した疑いがありますが、確たる証拠は見つかっていません。また、ミニー・ウィリアムズとその姉妹ナニーも、ホームズの周辺で失踪しています。

逮捕と裁判

1894年、ホームズは保険金詐欺の疑いで逮捕されました。彼は、自身の偽装死による保険金詐欺を計画しましたが、失敗。その後、協力者であったベンジャミン・ピツェルを殺害して保険金を得ようと企てました。

ピツェルの死後、ホームズはピツェルの3人の子供たちを誘拐し、殺害したことが明らかになります。彼は、アリスとネリーをトランクに閉じ込めてガスで窒息死させ、ハワードは薬殺したと供述しました。

ホームズは、1895年10月にベンジャミン・ピツェル殺害の罪で有罪判決を受け、死刑が確定しました。彼は、合計27件の殺人を自供しましたが、その中には生存者も含まれていました。彼は、自分が悪魔に憑依されていると主張し、自身の罪を認めながらも、その責任を外部に転嫁しようとしました。

死刑とその後

1896年5月7日、ホームズは絞首刑に処されました。処刑される際、彼は冷静であり、自らの遺体が盗まれて解剖されることを恐れ、セメント詰めにすることを望んだと伝えられています。

ホームズの「殺人の城」は、彼が逮捕された後、火災に見舞われ、長らく放置された後、1938年に取り壊されました。現在、その跡地には郵便局が建てられています。

後世への影響

ホームズの犯した罪は、当時の社会に大きな衝撃を与え、その後も様々なメディアで取り上げられてきました。エリック・ラーソンの著書『悪魔と博覧会』は、ホームズの生涯を詳細に描き、彼の悪行とシカゴ万国博覧会という二つの出来事を巧みに絡め合わせ、大きな話題を呼びました。

ホームズの物語は、小説、映画、テレビドラマ、漫画など、様々な形で語り継がれています。彼の特異なキャラクターは、数多くのフィクション作品に影響を与え、現代の連続殺人犯のイメージ形成にも影響を与えたとされています。

しかし、ホームズの犯罪に関する多くの物語は、事実とフィクションが混ざり合っており、彼の実像を捉えることは難しいとされています。彼の生涯は、人間の暗部を映し出す鏡として、今なお多くの人々を魅了し続けています。

もう一度検索