H.263

H.263は、国際電気通信連合（ITU-T）によって規格化された動画圧縮方式の一つで、1996年3月に承認されました。MPEG-4と同様に、超低ビットレートでの利用を主な目的として開発され、特にテレビ電話などのリアルタイム通信で広く活用されています。基本的な技術構造はMPEG-4ビジュアルと共通しており、低ビットレートでも比較的良好な画質を保つことが可能です。

技術的な詳細

H.263は、先に規格化されたH.261やMPEG-1、MPEG-2と同様に、フレーム間予測と離散コサイン変換（DCT）を組み合わせた「ハイブリッド型」の圧縮方式を採用しています。この方式は、動画のフレーム間の変化を予測することで、データ量を大幅に削減することができます。H.261で用いられていたループフィルタは削除され、代わりにMPEG-1で導入された半画素（ハーフペル）単位での動き補償が採用されました。これにより、動きの予測精度が向上し、より効率的な圧縮が可能になりました。

また、H.263では、エントロピー符号化としてハフマン符号が用いられていますが、ランとレベル、ラスト（ランレングスにおけるランとレベル、ラストは最後の係数を示す）を同時に符号化する3次元可変長符号化（3次元VLC）という新しい技術が導入されました。この技術によって、圧縮率が大幅に向上しました。H.263で開発されたこれらの技術は、後にMPEG-4にも採用されています。

H.263には、基本的な仕様である「Baseline」に加え、多くの拡張規格である「Annex」が存在します。これらのオプションをどの程度使用するかは、相互運用性を確保する上で非常に重要です。

利用される解像度

H.263では、主にCIF（Common Intermediate Format）やQCIF（Quarter CIF）といった解像度が使用されます。これらの解像度は、低ビットレート環境でも比較的良好な画質を保ちつつ、データ量を抑えることができるため、テレビ電話などの用途に適しています。

Adobe Flashでの利用

Adobe Flashでは、H.263のサブセットであるSorenson H.263が再生可能です。これにより、ウェブブラウザ上での動画再生においても、H.263の圧縮技術が利用されています。

関連技術

• - H.320：ISDN回線を利用したテレビ会議システムの規格
• - H.324：低ビットレート回線を利用したテレビ会議システムの規格
• - H.264：より高度な動画圧縮規格で、H.263の後継と位置付けられる

関連分野

• - データ圧縮：動画データなどの情報量を削減する技術

外部リンク

• - アップル - QuickTime:

　　QuickTime Playerは、H.263形式の動画再生にも対応している。

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