H10N8亜型

H10N8亜型について

H10N8亜型（Influenza A virus subtype H10N8）は、A型インフルエンザウイルスの一つで、1965年にイタリアでウズラから発見されました。このウイルス株は、A/quail/Italy/1117/1965として知られています。その後、2012年には中国の広東省の鳥市場でアヒルから採取されたウイルス株、A/Duck/Guangdong/E1/2012が全ゲノム配列の解読を受け、6月にその情報が公開されました。

H10N8亜型の特徴

そのゲノム解析の結果から、H10N8亜型はHAセグメントのアミノ酸配列が弱毒性であることが明らかになりました。またこのウイルスは鳥由来であることも確認されています。特にNA遺伝子は北米系統に属し、HA遺伝位はユーラシア系統であることが示されています。これにより、H10N8の株はカモ科の生物に広く見られ、様々な生息地で確認されています。

ヒトへの感染例

2013年12月18日、H10N8亜型によるヒトへの初感染が確認されました。中国江西省南昌市で、73歳の女性が重度の肺炎と筋力低下で入院し、治療にもかかわらず12月6日に亡くなりました。彼女は高血圧と心臓病を抱えており、免疫力が低下していました。生きた鳥を扱う市場に出入りしていたものの、直接的な鳥の解体は行っていませんでした。彼女に接触した他の人々には感染は報告されておらず、ウイルスの遺伝子解析によってその弱毒性が確認されています。このため、ヒト-ヒト感染のリスクは低いと考えられています。

その後、2014年1月25日にも、南昌市で55歳の女性が2例目の感染者として確認されました。彼女も市場に出入りしていることが確認され、状態は重体とされていたものの、周囲の人々には症状が見られませんでした。

流行の可能性と遺伝子変異

2014年2月、最初の感染例のウイルスに遺伝子変異が見られたことが報告され、これによりH10N8亜型のパンデミック（世界的流行）の可能性が否定できないとの見解が示されました。特にH9N2、H7N9、H5N1という他のウイルスの遺伝子を取り込んでいることから、これらのウイルスが人間に感染し多くの死者を出している事例があるため、危険性が指摘されています。さらに、この亜型は鳥類に対して病原性が低いため、監視が難しいという問題も抱えています。

まとめ

H10N8亜型は、過去の事例から見てもその感染リスクや流行の可能性について注視される必要があります。特に、ウイルスの遺伝子変異に関する研究は、将来のパンデミック対策において重要なテーマとなっています。

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