HAMMER

HAMMER: DragonFly BSDのシンプルで堅牢なファイルシステム

DragonFly BSDオペレーティングシステムの中核を担うファイルシステム、HAMMER。その開発を主導したのは、DragonFly BSDプロジェクトのリーダーであるマシュー・ディロン氏です。DragonFly BSDのデフォルトファイルシステムとして採用されているHAMMERは、冗長性に偏りがちなZFSを、よりシンプルで効率的に運用できるよう再設計されたという背景があります。そのシンプルさの裏には、高い信頼性と拡張性を実現するための工夫が凝らされています。

主要な特徴

HAMMERは、大規模なデータ管理に最適化された数々の特徴を備えています。まず、そのスケーラビリティは目覚ましく、単一ファイルシステムの最大サイズは1エクサバイトにも及びます。さらに、最大256個ものボリュームを同時に管理できるマルチボリューム機能も備えています。個々のファイルについても、最大4ペタバイトという巨大なサイズに対応可能です。

HAMMERの大きな利点の一つは、システムクラッシュからの復旧の迅速さです。従来のファイルシステムではクラッシュ後にfsck（ファイルシステムチェック）を実行する必要がありましたが、HAMMERではこのプロセスが不要です。即時回復機能により、システムダウンタイムを最小限に抑え、高い可用性を提供します。

データの信頼性と整合性を確保するための仕組みも充実しています。ネットワークミラーリング機能はデータ冗長性を高め、データ消失のリスクを軽減します。無制限のスナップショット機能により、任意の時点の状態に簡単に復元できます。これに加え、バックアップ機能、適度な粒度を持つバージョニング機能も備えています。CRC（巡回冗長検査）によるデータとメタデータのチェックサム計算は、データ破損を早期に検出し、修復を可能にします。重複排除機能は、ストレージ容量を効率的に使用できるよう支援します。

歴史

HAMMERはDragonFly BSD 2.0でベータ版として初公開され、2.2で正式版としてリリースされました。その後、HAMMER 2がDragonFly BSD 5.0で実験的にサポートされ、5.2で正式サポートされるに至っています。バージョンアップを重ねるごとに機能強化や安定性の向上が図られており、現在も進化を続けています。

まとめ

HAMMERは、大容量、高信頼性、高可用性を求めるユーザーにとって非常に魅力的なファイルシステムです。そのシンプルで効率的な設計は、複雑な設定や管理を必要とせず、容易な運用を可能にしています。DragonFly BSDだけでなく、FreeBSDやLinuxへの移植も検討されており、将来的にはより多くのプラットフォームで利用できるようになる可能性があります。シンプルさと堅牢性を両立させたHAMMERは、現代のファイルシステムの理想像を提示していると言えるでしょう。

もう一度検索