HECパリ

HECパリ（パリ高等商業学校）

HECパリ（École des hautes études commerciales de Paris）は、1881年にパリ商工会議所によって設立されたフランスを代表するビジネススクールです。通称はHEC Paris（アッシュ・ウ・セ・パリ）として知られています。

概要

当初はパリ17区のトクヴィル通りにキャンパスを構えていましたが、1964年にパリ南西約20km、ヴェルサイユ近郊のジュイ＝アン＝ジョザスに移転しました。

HECパリは、その教育水準の高さから、数々のランキングで常に上位に位置付けられています。特に、Financial Timesの欧州ビジネス・スクール・ランキングでは、2006年以降トップビジネススクールとしての評価を確立しています。QS世界大学ランキングにおいても、長年にわたり世界のビジネススクールTop5に選ばれ続けています。

フランス国内においては、国立行政学院（ENA）やエコール・ポリテクニークと並び、グランゼコールの中でも突出した存在として認識されています。長年にわたり、フランスおよび欧州の財政界に多くの優秀な人材を輩出し続けており、CAC40に名を連ねる企業のおよそ半数のCEOが、ENA、エコール・ポリテクニーク、HECの卒業生です。

タイムズ・ハイアー・エデュケーションによるフォーチュン500社へのCEO輩出ランキング（THE Alma Mater Index 2017）では、ハーバード大学、スタンフォード大学に次ぐ3位にランクインしており、その影響力の大きさを物語っています。

修士課程

HECパリでは、MBA（経営学修士）、MSc（学術的な専門経営学修士）、EMBA（エグゼクティブMBA）の3つの修士課程を提供しています。これらのプログラムは、Financial Timesの欧州ビジネス・スクール・ランキングで常に高い評価を得ています。

MBA

MBAプログラムでは、全日制と定時制のプログラムを選択できます。1969年に欧州初の全日制MBAプログラムの一つとして設立され、多様性教育、スポーツ大会、陸軍士官学校でのリーダーシップ教育プログラムが特徴です。2012年には、ベイン・アンド・カンパニーによるコンサルティングを受け、リーダーシップ教育や企業との実践的なプログラム（エクスペリメンタル・ラーニング）の比重を高めるなど、プログラムの再設計が行われました。

世界55カ国以上から優秀な学生が集まり、その9割以上がフランス国外からの学生です。入学選考は厳格であり、アカデミックな能力、実務経験、国際経験、リーダーシップの素質、人間性などが総合的に評価されます。2017年度入学生の平均GMAT点数は690、合格率は17％でした。フランス語の習得は必須ではありませんが、プログラム開始前に基本的なフランス語を学ぶことが推奨されています。Financial Timesの調査によると、2020年度卒業生の卒業3年後の平均収入は16万4529ドルでした。

語学

公式に要求される言語は英語のみですが、HECパリはフランス語教育に力を入れています。入学後にはフランス語のほか、他言語での講座も開講され、卒業生の多くは卒業時に最低3か国語を扱えるようになります。

交換留学・複数学位プログラム

HECパリは、世界50以上の教育機関と交換留学制度を提携しており、毎年およそ半数の学生が留学を経験します。また、計12校と連携した二重学位プログラム（Double Degree Program）も提供しており、プログラムを修了することで双方の学校から修士号を受領できます。慶應義塾大学大学院経営管理研究科も二重学位プログラムの提携校の一つです。

EMBA

職務経験8年以上を必要とするシニアマネージャー向けのEMBA（Executive MBA）には、TRIUM Global Executive MBAとExecutive MBAの2種類があります。TRIUMプログラムは、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスおよびロンドン・スクール・オブ・エコノミクス（LSE）との共同プログラムであり、Financial TimesのExecutive MBAランキングで常に上位にランクインしています。

MSc

MSc in Managementの学位を取得するコースは、一般的なグランゼコールに相当する課程です。毎年、応募者多数の中から選ばれた学生が入学します。

著名な卒業生

HECパリは、政官界、財界に多くの著名な卒業生を輩出しています。元フランス首相のポール・レイノー、元フランス大統領のフランソワ・オランド、世界貿易機関（WTO）事務局長のパスカル・ラミーなどがその代表例です。また、ケリング会長兼CEOのフランソワ＝アンリ・ピノー、ロレアルCEOのジャン＝ポール・アゴンなど、財界でも多くのリーダーを輩出しています。

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