HRT・F112

HRT F112：2012年シーズンの挑戦と遺産

2012年、HRT F1チームは、コスワース製エンジンとウィリアムズ製ギアボックスを搭載したF1マシン、HRT F112でF1世界選手権に挑みました。しかし、このマシンは開発段階から数々の困難に見舞われました。まず、2012年のレギュレーション改正により厳格化されたクラッシュテストで、いくつかの項目をクリアできず、テスト開始が大幅に遅れました。そのため、合同テスト最終日の翌日、カタルーニャ・サーキットで慌ただしいシェイクダウンを実施せざるを得ませんでした。

マシン概要：白、赤、金が織りなす挑戦者

HRT F112は、白をベースに赤と金色のラインをあしらったカラーリングが特徴的でした。車体後部にはコスワース製エンジンとウィリアムズ製ギアボックス、そしてウィリアムズ製のKERSシステムを搭載可能な設計でしたが、予算の都合などから2012年シーズンはKERSは使用されませんでした。シャシーはカーボンファイバーとハニカムコンポジット構造のモノコックを採用。サスペンションは、プッシュロッドによるロッカー制御のダブルウィッシュボーン式で、油圧式リニアダンパーを備えていました。

詳細スペック：軽量化と信頼性を追求

HRT F112のスペックは、F1マシンとしての性能を追求した設計思想が見て取れます。軽量化のために、燃料タンクはケブラー強化ゴム製、ステアリングホイールはカーボンファイバー製、ブレーキディスクとパッドはカーボンファイバー製を採用。ギアボックスはウィリアムズ製のセミオートマチック7速で、信頼性の高いシステムが組まれていました。ホイールはマグネシウム合金製、タイヤはピレリP Zeroを使用。マシンの全長、全高、トレッド幅などは、レギュレーションに則った設計となっています。エンジンの最高回転数はレギュレーションで定められた18,000rpmでした。

2012年シーズンとその後：短い歴史と遺産

残念ながら、HRT F1チームは2012年シーズンをもって消滅しました。開発の遅れや資金難などが重なり、チームはF1界から姿を消しました。しかし、HRT F112は、F1の歴史において、限られた予算の中でF1参戦に挑戦したチームの軌跡を示す貴重な存在です。2台のHRT F112は、シーズン終了後、それぞれリサイクル業者とピレリへと所有権が移転しました。このマシンは、F1という厳しい世界に挑戦したチームの物語を語り継ぐ、象徴的な存在と言えるでしょう。

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