HRT F1

HRT F1チーム：栄光と挫折の3年間

スペインのF1コンストラクター、HRT F1チーム。2010年から2012年にかけてF1世界選手権に参戦したこのチームは、短命ながらもF1の歴史にその名を刻みました。華々しいデビューから、資金難に苦しみ、最終的には撤退という結末を迎えるまでの道のりを紐解きます。

設立とF1への挑戦

HRTの前身は、元F1ドライバーのエイドリアン・カンポスが率いるカンポス・レーシングです。下位カテゴリーで実績を積み重ね、多くの才能をF1へと送り出した同チームは、2009年、F1への参戦を目指してエントリー候補にノミネートされました。チーム名は当初「カンポス・メタ」、F1チームとしての名称は「カンポスグランプリ」と名付けられましたが、資金調達に苦戦します。

資金不足のため、カンポスは代表を辞任し、経営権はホセ・ラモン・カラバンテに移行。チーム名は「ヒスパニア・レーシング・F1チーム」へと変更されました。コリン・コレスを新たなチーム代表に迎え、開幕戦バーレーンGPを目前に、スペイン・ムルシアで新体制を発表。カルン・チャンドックをドライバーとして迎え入れました。その後、FIAにチーム名が「HRT F1」として承認され、ダークグレーをベースに赤と黄色のカラーリングを施したマシン「F110」を披露しました。

2010年シーズン：挑戦の始まり

開幕戦を迎えるも、マシンの開発期間が短かったため、テスト走行は皆無。コレス代表は睡眠時間を削って体制を整えたと語っています。マシンはダラーラに製造を委託していましたが、性能に不満が残る状況が続きました。マシンの開発体制強化が遅れたことから、テクニカルコンサルタントのジェフ・ウィリスがチームを離れる可能性も囁かれ、結果的にダラーラとの契約を解消、独自開発を目指しました。フェラーリやトヨタとの技術提携も模索しましたが、実現には至りませんでした。

レースでは、開幕戦ではチャンドックがマシントラブルに見舞われ、予選最下位に沈みました。その後、カーボンファイバー製サスペンションへの変更などを通じて徐々に戦闘力を高めていき、オーストラリアGPではチャンドックが完走を果たしました。その後も、何度か完走を記録するなど、着実に経験を積みました。シーズン終盤には、山本左近がテストドライバーから正ドライバーへと昇格しています。資金難の噂も流れたものの、コレス代表は否定しました。

2011年シーズン：独自開発への挑戦

2011年シーズンは、ウィリアムズとの技術提携を発表。ギアボックスの供給を受けました。また、新たなパートナーとしてホアン・ヴィラロンガを迎え入れ、資金面の強化に繋がる期待が寄せられました。 この年は、独自の設計による「F111」を投入。Panda SecurityやBASEなどのスポンサーを獲得しました。

しかし、開幕戦オーストラリアGPではテスト不足が響き予選落ち。シーズン中盤には、レッドブル育成ドライバーであるダニエル・リチャルドが、カーティケヤンの代役として起用され、チームはスペインの投資会社テサン・キャピタルが主要株主となりました。この年、チーム名は「HRT」に統一されました。カナダGPではリウッツィが13位で完走し、チームにとって大きな成果となりました。

2012年シーズンと撤退

2012年は、ペドロ・デ・ラ・ロサとナレイン・カーティケヤンをドライバーに起用。コレス代表に代わり、ルイス・ペレス＝サラが新代表に就任しました。マシンの開発は遅れ、開幕戦では再び予選落ちを喫しました。カナダGPではデ・ラ・ロサが好調な走りを見せましたが、ブレーキトラブルでリタイア。

しかし、チームは資金難から抜け出すことができず、2012年11月、チームの売却を発表。その後、新オーナーが決まらず、2013年シーズンのエントリーリストにHRTの名前は記載されませんでした。チームは解散し、その歴史に幕を閉じました。

まとめ

HRT F1チームは、資金難に苦しみながらもF1世界選手権に挑み続けたチームでした。短命に終わったものの、その挑戦はF1の歴史に小さな足跡を残しました。彼らの努力と挑戦は、多くのF1ファンに記憶されています。

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