ViolaWWW

ViolaWWW: 先駆的なWebブラウザ

ViolaWWWは、1990年代初頭に開発されたWebブラウザで、Mosaicが登場するまで一定の人気を博していました。当時のWorld Wide Web利用者は限られていましたが、ViolaWWWは、Webブラウジングの初期段階において重要な役割を果たしました。

開発の背景

ViolaWWWは、カリフォルニア大学バークレー校の学生であった魏培源（Pei Wei）によって考案されました。彼は1989年にHyperCardと出会い、そのグラフィカルなインターフェースに感銘を受けました。しかし、当時Macintoshを持っていなかったため、HyperCardは利用できませんでした。そこで、彼は手元にあったX端末上で動作するブラウザを開発することを決意しました。

1990年に最初のViolaが誕生しました。これは、HyperCardのマニュアルを参考に、そのコンセプトをX Window System上に実装したものでした。その後、魏培源は1991年にViola 0.8をリリースし、卒業後も開発を続けました。

彼の次の目標は、インターネット上でViolaを動作させることでした。その際に、ティム・バーナーズ＝リーのWorld Wide Webに関するメールを読み、URLの必要性を理解しました。彼はバーナーズ＝リーにX版ブラウザの開発を伝え、そのわずか4日後にViolaWWWを完成させました。

先進的な機能

ViolaWWWは、1992年の時点で、スクリプト埋め込み、スタイルシート、表のレンダリングといった先進的な機能を備えていました。

クライアント側での文書挿入: いわゆるフレームやJavaScriptによるシンジケーションに相当する機能を実装していました。
単純なスタイルシート機構: フォントの種類、色、位置合わせなどの情報を文書に挿入できました。これは、CSSが登場するよりも前のことで、ViolaWWWの先見性を表しています。
サイドバーパネル: メタ情報を表示するためのサイドバーパネルを備えていました。これは現代のブラウザにも見られる機能です。
HTML文書からアクセス可能なスクリプト言語: JavaScriptなどの先駆けとなるスクリプト言語を実装していました。

マイクロソフト対Eolasの裁判

1999年、Eolas Technologiesとカリフォルニア大学は、マイクロソフトがWebブラウザに他のソフトウェアを組み込む方法に関する特許を侵害しているとして訴えました。2003年にはEolas側の訴えが認められ、マイクロソフトに多額の賠償金が命じられました。

マイクロソフトは控訴し、ViolaWWWが既に同様の技術を実装していたことを示しました。さらに、Eolas側が特許申請時にViolaWWWに関する知識を隠蔽していた可能性も指摘しました。これにより、2005年に下級審への差し戻しが行われ、2007年に和解が成立しました。和解条件の詳細は明らかにされていません。

まとめ

ViolaWWWは、World Wide Webの初期段階において重要な役割を果たしたブラウザです。その先進的な機能は、後のWebブラウザ開発に大きな影響を与えました。しかし、X Window System上でしか動作しなかったため、NCSA Mosaicにその座を譲ることとなりました。それでも、ViolaWWWの存在は、Webブラウジングの歴史において決して忘れてはならないものです。


参考文献

Freedman, Alan. Computer Desktop Encyclopedia, 9th Edition. New York: Osborne, 2001.

外部リンク

The Viola Home Page
IE特許訴訟、裁判所がマイクロソフトの訴えを却下
米Microsoft、逆転勝利、Eolasのブラウザ特許侵害訴訟
* MS、IEプラグイン特許訴訟でEolasと和解

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