HyperScan

Mattel HyperScan：短命に終わった画期的なゲーム機

2006年、玩具メーカーのマテル社は家庭用ゲーム機『Mattel HyperScan（マテル ハイパースキャン）』を発売しました。これは、従来のゲーム機と同様にゲームソフトで遊べることに加え、別売りのトレーディングカードを本体に内蔵されたスキャナで読み込むことでゲームを拡張できるという、革新的なコンセプトの製品でした。ターゲット層は、ヒーローアニメを好む5歳から9歳の男児と想定されていましたが、ゲームソフトのレーティングが一部13歳以上に指定されていた点が、やや矛盾していました。

拡張性と商業的失敗

HyperScanは、UDFフォーマットのCD-ROMをゲームソフトとして採用していましたが、真の肝は付属のトレーディングカードでした。13.56MHzのRFIDスキャナを搭載し、カードに記録された情報を読み取ることで、ゲーム内のキャラクター能力を強化したり、セーブデータの書き込みを行ったりすることが可能でした。しかし、この画期的なアイデアにも関わらず、HyperScanは市場で全く受け入れられず、発売後すぐに大幅な値引きを余儀なくされました。本体価格は69.99ドルから9.99ドルに、ソフトは19.99ドルから1.99ドルに、カードのブースターパックも0.99ドルまで値下がりし、2007年には販売が終了しました。『PC World』誌では「史上最悪のゲーム機」の一つに挙げられるほど、商業的には大失敗に終わりました。

ハードウェア：安価な構成

玩具であることを踏まえ、HyperScanのハードウェアは特に高性能ではありませんでした。CPUには、多数の玩具に採用実績のある台湾Sunplus（凌陽科技）製のSPGシリーズが使用され、RFIDスキャナ周りの開発はイギリスのInnovision Research and Technology plcが担当しました。仕様は、CPUにSunplus SPG290、出力にコンポジットビデオ端子、メモリ16MB SDRAM、解像度640×480、65535色（RGB 565 mode）、そして13.56MHzのRFIDスキャナとRFIDストレージを搭載していました。カードには、96バイトのユーザーメモリ、8バイトの一意ID、6バイトのワンタイムプログラマブルメモリが搭載されていました。本体には、「Cube Box」と「2-player value pack」の2つのバリエーションがありました。

ソフトウェア：キャラクターゲームと開発中止

発売されたソフトは、『X-Men』『Ben 10』『Interstellar Wrestling League』『Marvel Heroes』『Spider-Man』など、いずれもキャラクターを題材とした5タイトルが確認されています。『Avatar the Last Airbender』も存在したようですが、詳細は不明です。HyperScanの失敗を受け、開発中止となったタイトルも存在しており、『Nick Extreme Sports』はその一つです。商業的には失敗したものの、その後も熱心なファンによるハードウェア解析や同人ソフトの開発が行われていることは特筆に値します。

類似製品との比較

HyperScanは、バーコードを読み取ってゲームを拡張する『バーコードバトラー』や、トレーディングカードを用いたアーケードゲーム『データカードダス』と類似したコンセプトを持っていました。しかし、HyperScanは複数のゲームが楽しめるプログラム交換式ではなく、1ハード1ソフトという点で、それらとは大きく異なっていました。また、HyperScanと同じCPUを採用した玩具『威力棒』も存在しました。

まとめ

Mattel HyperScanは、革新的なアイデアと商業的な失敗という、両極端な側面を持つゲーム機でした。その短命な歴史と、熱心なファンによる継続的な活動は、ゲーム史における特異な存在として記憶されるでしょう。

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