I dream
アルバム『I dream』について
チューリップの15枚目のアルバム『I dream』は、1984年1月21日にリリースされました。この作品は、バンドにとっての重要な節目となるものであり、いくつかの点で革新をもたらしました。デビュー以来プロデューサーを務めていた新田和長が東芝EMIから独立し、1984年4月にはファンハウスが新設され、チューリップは新たにこのレーベルへと移籍しました。そのため、これは彼らが長年にわたって在籍していた東芝EMIでの最後の作品となったのです。
このアルバムは、チューリップにとって初めてのデジタルレコーディング作であり、大きな音楽的進化が見られる点が特徴です。ドラムマシンの使用や、デジタルシンセサイザーの代表格であるヤマハDX7の導入など、当時の音楽環境は大きく変化していました。その中で『I dream』は、チューリップの第2期の過渡期を象徴する作品として位置付けられています。
アルバムのコンセプトも、新たな方向性を示しています。前作『Halo』までの宇宙をテーマにした路線から脱却し、恋愛を中心に据えた内容になっています。この転換は、彼らのサウンドやリリックにも色濃く反映されており、より親しみやすい楽曲が揃っています。
ジャケットデザインも興味深く、メンバーが椅子や机にもたれかかっている姿が六本木のスタジオで収められた写真が使用されています。この写真は、シングル『愛の迷路』のジャケットにも起用され、アルバム全体の雰囲気を一層引き立てています。
レコーディングの詳細
アルバム内の楽曲の大半には、ドラムマシンのLinn Drumが使用されており、唯一リアルなドラムセットで録音されたのは「Feel it」と「冬の街」の2曲のみです。ほかの楽曲は、リズムパターンを打ち込む作業が中心で、エレクトリックドラムやタム、シンバル類のオーバーダブが重ねられました。ギターサウンドも大きく変化し、特に安部俊幸の演奏がデジタル楽器に合わせて進化したことが特徴的です。前年から始まった星野楽器とのエンドースメントも、この変化に影響を与えたと考えられています。
収録曲の紹介
A面
- - エジプトの風
チューリップのメンバーが冒頭でボーカルを取った初の作品です。
- - 愛の迷路
シングルカットされた楽曲で、同じテイクが収録されています。
- - 恋は素顔で
- - この小さな掌 (詩歩子へ)
財津が姫野の娘に贈った曲で、ライブでも演奏されています。
- - Feel It
B面
- - たったひとりのオーディエンス
- - 黄昏モノローグ
- - 冬の街
- - 夏は終わらない
- - I dream
アルバムタイトル曲で、愛のメッセージを込めた楽曲です。
このように『I dream』は、チューリップの音楽的成熟を象徴する重要なアルバムであることがうかがえます。
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