IBM 2245

IBM 2245漢字印刷機：黎明期の漢字印字を支えたプリンター

IBM 2245漢字印刷機は、1972年に日本IBMが発表した「IBM漢字システム」の中核をなす漢字プリンターです。当時の技術的な制約の中で、限られた印刷幅と速度ながらも、主に宛名印刷用途で活躍しました。このプリンターは、IBMの漢字情報処理技術の発展において重要な役割を果たしました。

IBM漢字システムの構成

IBM漢字システムは、1970年の大阪万博でその技術が披露され、翌1971年に以下のシステム構成で発表されました。

IBM 5924 漢字穿孔機: 漢字情報をパンチカードに記録する装置。
IBM 2245 漢字印刷機: 漢字情報を紙に印字する装置。
IBM System/360-System/370 OS/VS & DOS/VSE プログラミング・サポート: これらのシステム上で漢字処理を可能にするソフトウェア。

IBM 2245印刷機は、System/360およびSystem/370の多重チャネル、ブロック多重チャネル、または選択チャネルに接続されるラインプリンターとして機能しました。印刷機構にはドットインパクト方式が採用されており、System/360モデル20コンピューター・システムやSystem/3で使われたIBM 2560多機能カード装置の機構を改良して利用しています。この機構により、各漢字やその他の全角文字を横18ドットx縦22ドット（縦書きの場合は18x18）で連続用紙に印刷することが可能でした。インパクト方式のため、複写も容易に行えました。

また、紙送り機構には、従来の紙テープ方式ではなく、コンピューターからのプログラム制御方式が新しく開発され、より柔軟な印刷制御を可能にしました。

開発・製造・販売

IBM 2245漢字印刷機の開発は、米国IBMエンディコットの施設で行われました。開発には日本IBMからも数名のエンジニアが参加し、標準製品として販売されました。一方、同時に発表された漢字入力装置のIBM 5924漢字穿孔機は、特殊製品（RPQ＝顧客ごとの契約）として扱われました。

応用範囲と課題

IBM 2245漢字印刷機は、多岐にわたる応用が期待されましたが、印刷スパンが比較的狭かったため、主に企業の宛名書き用途で利用されました。当時、コンピューターによる宛名書きは半角カタカナが主流であったため、漢字での印字は画期的でした。しかし、当時はまだ安価な小型メモリーが未発達であったため、どのドットを打つかの情報はすべてコンピューター側で用意する必要がありました。そのため、マルチタスクを標榜するコンピューターでも、2245印刷タスク以外の処理が著しく遅延するという問題がありました。

後継機種

IBM 2245漢字印刷機の後継機種としては、1979年に発表された第二次「IBM漢字システム」で発表されたIBM 3800モデル2印刷サブシステムがあります。この機種は、IBMロチェスターで開発され、より高速で高品質な印刷を可能にしました。

まとめ

IBM 2245漢字印刷機は、黎明期の漢字情報処理において重要な役割を果たしました。技術的な制約の中で、その機能を最大限に発揮し、当時のビジネスシーンにおける漢字情報処理の可能性を広げました。その開発から販売、そして後継機種への進化は、コンピューター技術の進歩を象徴する事例と言えるでしょう。

参照項目

IBM漢字システム
IBM 5924漢字穿孔機

外部リンク

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